ACP(人生会議)って何ですか?
「特別な場面の特別な行為」ではない
患者さんと医師とのコミュニケーションが十分でないので、それを補うために、看護師によるACPが必要だという話もありますが、患者さんの思いに耳を傾けるのは、看護師だけの仕事ではありません。 医師も他の医療者も、家族や友人も、みんながACPの担い手であり、普段から、患者さんの希望や価値観を気にかけ、話を聞こうとする姿勢でいる必要があります。 患者さんからみると、話しかけやすい相手とそうでない相手がいますので、誰が話しかけられても、その情報を共有できるように、連携することも重要でしょう。 私が、がん研有明病院「ACP推進チーム」の責任者になったときに掲げた標語は、「みんなでACP」です。 ACPは、「特別な場面に、特別な医療者が行う、特別な行為」ではなく、「すべての医療者が、すべての患者さんに、いつでも、どこでも、自然に行う医療」であってほしいと思っています。 患者さんの価値観を尊重する医療が、自然な形で浸透すれば、ACPという言葉はいらなくなるはずで、そんな日が来るのを期待しています。 ACP推進チームのメンバーで議論を重ねた結果、がん研有明病院のACPの定義は、こうなりました。 患者の価値観、希望、大切にしていることを 患者・家族等や医療従事者が繰り返し語り合い 患者が自分らしく生きられるようにすること 人生の最終段階の意思決定の話にはせず、患者さんが自分らしく生きることを目標に、より大きい意味でのACPを考えました。「話し合い」ではなく、より深いニュアンスのある「語り合い」にしました。 こんな独自の定義を作ってしまうと、また混乱を招いてしまうかもしれませんが、大事なのは、ACPの議論を通じて、目指すべき医療について考えることだと思っています。 ACPは道具の一つであって、ACPを行うことがゴールではありません。私たちが目指すべきは、患者さん一人ひとりが自分らしく生き、その人なりの幸せを感じられるような医療であり、そのためにACPという道具を活用できれば、と思っています。