「彼らは島の宝なんです」――プロ野球界のレジェンド・村田兆治が、離島甲子園で球児たちに伝えたいこと
「島の子は本土の子に比べてやっぱり引っ込み思案だったり、おとなしかったりする。離島甲子園に出てくるチームだって気質の差がある。南の子たちは快活で、北の子は人見知り。今回はコロナでさよならパーティーができなかったんだけど、大会が終わるころには北の島の子と南の島の子が、仲良く話すことができるようになるんだよ。そんな経験を島に持ち帰って、野球を通して学んだことを、将来の夢に生かしてほしいね。子どもたちには常に『人の上に立つ人材になれ』って言っているんだ」
離島球児たちの距離が縮まっていく瞬間
キャッチボールクラシックは混合チームがいくつかつくられた。実際、石垣島チームの8人の中に、たったひとり礼文島の選手が交じっていた。最初はぎこちなかったが、最後にはまるで以前からの知り合いだったように笑い、そしてスマホの写真に収まっていた。 優勝したチームの輪に、他のチームの子が交じって一緒に祝福する。「青春ってすごく密」。“陸の甲子園”で優勝した仙台育英・須江航監督が発した言葉を体現するような瞬間が訪れた。
「村田兆治さんはもともとレジェンドとして知っていました。優しい方で、『自分たちが個人個人で持つ夢を大事にしろ』とご指導くださいました。島にいるとなかなか他のチームと対戦することはないのですが、試合の勝敗が決まった後でも、対戦したチームと仲良くしたりできたのがよかったです」 このキャッチボールクラシックで優勝した「対馬ヤマネコボーイズ」のキャプテン・藤原丈己くんは嬉しそうに語った。村田にとっては孫とも言える子どもたちにも「レジェンド」の思いはしっかりと伝わっている。
「人生にはうまくいかないこともあるかもしれないけど、苦労は報われる。常に成功を確信して頑張る。若いときはそんなこと考えないかもしれないけど、体を鍛え、健康に気をつけて、人を喜ばせる人間になる。子どもたちにはそんなことを学んで島に帰ってもらったらいいよね」
翌日、両津港に村田の姿があった。新潟までのフェリーに乗り込み、長い帰途に就こうとする球児たちに身ぶり手ぶりでピッチングフォームを教えていた。 モットーは「人生先発完投」。来年の開催地・奄美大島で、73歳になった村田兆治は「まさかり投法」を披露する。