絶滅宣言の50年後に再発見、ニュージーランドの飛べない鳥「タカヘ」
タカヘの再発見は、人々の不屈の精神と、生態学への飽くなき好奇心の賜物だ
■ユニークな習性をもつ鳥 この調査は、タカヘの強靭さを証明しただけでなく、この鳥のユニークな習性にも光を当てた。タカヘは高山草原に暮らし、タソックと呼ばれる草の葉をむしって、柔らかいその基部を食べる。冬には標高の低い土地に降りてきて、森林に隠れ棲む。 タカヘは一夫一妻制で、長期にわたるペアの絆を形成する。1シーズンに1羽だけヒナを育て、うっそうとした植生のなかに用心深く巣を隠す。 タカヘの再発見は、人々の不屈の精神と、生態学への飽くなき好奇心の賜物だ。同時に、生息地破壊と外来捕食者という脅威にさらされた種が、いかに脆弱であるかを物語る出来事でもある。タカヘの生息調査は、この鳥だけでなく、ニュージーランドの自然遺産の象徴を守り抜くための最初のステップだった。 ■再発見と同時に始まった保全プロジェクト 野生のタカヘが生き延びていたというニュースは、ニュージーランドの内外に衝撃を与えた。再発見とともに、緊急保全策の実施を訴える声が高まった。自然保護団体や政府職員は、希少で象徴的なこの鳥を保護することの重要性を認識した。 最初の対応として、マーチソン山脈は保護区に指定され、タカヘの自然生息地は、人間活動や外来捕食者によるかく乱から守られることとなった(オコジョやドブネズミといった外来捕食者は、ニュージーランド全土で、在来鳥類の個体群を激減させていた)。 ニュージーランド野生生物局(現在の環境保全省の前身)は、タカヘに特化した保護プログラムを迅速に設立した。初期の対策として、捕食者の駆除、生息地の復元、残存個体群の詳細なモニタリングが実施された。フィールド研究者によるタカヘの行動・食性・繁殖パターンの研究が始まり、この鳥に何が必要で、どんな脅威が迫っているかに関する理解が進んだ。 年月とともに、保護の取り組みは、より洗練されていった。個体数を増やし、種の保存のセーフティーネットとするための飼育下繁殖プログラムが設立された。ティリティリ・マタンギ島やカピティ島といった、捕食者のいない自然保護区への導入が行われ、安全な環境での繁殖が保証された。