「合鴨」の名付け親! 命を育て、生食でもいただける…極上の大阪ブランド「河内鴨」
刺身で食べられる河内鴨
最初は、エサの配合などの加減もよく分からず、手探りで飼育を開始。1日に数羽しか精肉にすることができなかった。しかし、与えるエサの分量や配合、飼育方法などについても試行錯誤を重ね、河内鴨を日本を代表するブランドに育て上げた。 現在は、河内鴨の孵化から飼育、処理・加工、卸・小売りまでを佳彦氏夫妻、息子2人と娘の家族、社員・パートを含め30名弱で行っている。 与えるエサは、最初の3週間はトウモロコシが60%と大麦・小麦、その後は飼料米60%と大麦・小麦他の配合にするなど、きめ細やかに変えている。これらの無農薬飼料は、人が食べても美味しいほど高品質だ。 1坪あたり6~7羽の平飼いの畜舎では、河内鴨が元気に走り回っている。畜舎の床はメッシュ状になっていて、風通しがよく衛生的な環境だ。抗生物質や成長ホルモン剤などは一切使わず、すくすくと育つ河内鴨。通常の飼育期間は50日ほどだが、ツムラ本店ではその1.5倍の75日を飼育期間としている。 大切に育てられた河内鴨は、毎日200羽限定で出荷・販売される。作業的にも、生で食べられる鮮度と品質を保つためにも、この数がほぼ限界なのだそうだ。毎朝全員が5時出勤で、終わるのは夕方5時。働き方改革を進めた結果、それでも昔よりは随分楽になったという。生き物が相手なので日曜日もなく、昔は、朝3時から夜7~8時くらいまで仕事をしていたそうだ。 処理過程は全て手作業。中でも一番時間がかかるのが、皮の表面に残る棒状の羽根を1本1本毛抜きで抜く作業だ。この棒状の羽根は飼育期間が50日であれば生えてこず、その分エサ代もかからなくてすむが、河内鴨特有の脂身の深みや美味しさが増すよう、あえて25日間長く飼育している。 こうして食肉となった河内鴨は、その日のうちに有名料理店をはじめとする飲食店に届けられる。卸先は現在200店舗ほどだが、取引を待つお店は後を絶たない。刺身で食べることができる生の肉は、目が行き届く範囲にしか出荷・販売しないと決めている。保存料なども一切使っていないので、鮮度にはことのほか気を使うのだそうだ。