湘南、仙台浮上でさらに混沌化してきたJリーグ残留争いの行方
連覇へ向けて首位を快走する川崎、2位で追走する横浜F・マリノスにも、白熱の攻防を演じながら1点差で惜敗した。それでもぶれない背中が「智さんのために」という団結心をチーム内に生み出し、残留を争う横浜FCとの「シックス・ポインター」で課題だった2得点目を奪い、勝利とともにライバルを再び最下位へ突き落とした。 横浜FCと入れ替わる形で最下位から19位へ浮上し、残留への可能性を繋ぎ止めた仙台の戦いは、広島戦を直前に控えたミーティングから幕を開けた。 「死ぬか生き残れるかの戦いだ。死力を尽くせ。死ぬ気になれば何でもできる」 声の主は今シーズンから8年ぶりに仙台の指揮を執る手倉森監督だった。ともに降格圏にあえぐ大分トリニータとの「シックス・ポインター」だった前節で0-2の完敗。放ったシュートがわずか1本と低調なパフォーマンスに終わり、覇気も感じさせなかった内容に危機感を募らせた指揮官はさらに続けた。 「去年から続くコロナ禍でサッカーをやらせてもらっている立場への感謝を、残留争いに巻き込まれたなかで忘れていないか。自分は最下位にいることを許さない。ただ、これは自分からみんなへ向ける言葉ではなく、みんなが自らに訴えてほしい言葉だ」 ロッカールームに響いた檄は開始わずか10分に、北海道コンサドーレ札幌と名古屋グランパスから連勝を、しかも相手を零封してマークし、意気揚々と敵地へ乗り込んできた広島の守備網に完璧な風穴を開ける先制ゴールとなって具現化された。 こぼれ球を拾ったMF加藤千尋がペナルティーエリア内の右側へ通した縦パスを、FW富樫敬真が左から右斜め前方へ走り込みながらトラップ。相手選手たちのマークを引きつけた上で、自分がそれまでいた左斜め後方へボールを落とした。 ポッカリと空いたスペースへ走り込んできた35歳のベテラン、MF関口訓充は「おそらく敬真は、僕へ落としたわけではないと思うけど」と苦笑しながら利き足の右足を一閃。カーブの軌道を描いた一撃を、ゴール右隅へ鮮やかに突き刺した。 「巻くようなシュートには自信があるので、自然体のまま打つことができた」 広島の守護神、林卓人が一歩も動けない一撃は、関口にとって2019年11月10日の清水戦以来、約2年ぶりにJ1リーグ戦で決めた通算12得点目となった。 「最下位という部分で悔しい思いを持っていたし、かといって下から4つはどの順位にいても落ちる。逆に自分のなかでは開き直ってやるしかないと思っていた。残り6試合で自分たちが6連勝して、それでも残留できなければしょうがないと」 帝京高から2004年に加入した仙台でプロのキャリアをスタートさせた関口は、J2を戦った時期も、第一次手倉森政権でJ1の上位に食い込み続けた時期も知っている。