湘南、仙台浮上でさらに混沌化してきたJリーグ残留争いの行方
「個人的なことですが、昨日、大好きだったお祖母ちゃんが亡くなって。僕自身、今日はどうしてもチームの力になりたかったし、絶対に勝ちたい試合だった。空で見てくれているお祖母ちゃんのために結果が残せてよかったです」 横浜FC戦前日の22日に父方の祖母、山田きくさんが93歳で他界した。浦和レッズ時代から孫が出場する試合を観戦するのが大好きだったきくさんは体調が優れず、スタジアムから足が遠のいていた。21日まで面会に通い、覚悟を決めて「しっかりとお別れをしてきました」と振り返った山田は、試合後の涙に込めた思いを明かした。 「今日は力がみなぎっていたというか。ゴールしたときも試合が終わったときも、お祖母ちゃんの力を借りられたと思えたので『ありがとう』という気持ちを込めました」 後半33分に同じく途中出場のFW大橋祐紀が決めた同点ゴールも、右サイドから山田があげたクロスが起点になっていた。さらに試合を巻き戻していくと、ともに無得点の均衡が破られた同18分のゴールの発端となった不用意なミスに行き着く。 右タッチライン際でDF石原広教が出した縦パスが、対面のMF松尾佑介に難なくカットされる。すかさず入れ替わられた松尾にドリブルで独走され、必死に追走するも届かないまま、カットインからゴール右隅へ先制弾を流し込まれた。 後半38分に交代でピッチを後にした石原は、勝利を告げる主審の笛が鳴り響いた直後からベンチ前でうずくまって号泣した。背中越しに周囲からねぎらわれても、なかなか顔を上げられない。小学生年代のジュニアから湘南で育ち、今シーズンのプレー時間がチーム最多の2873分を数える22歳の涙を山口監督はこう察した。 「それくらい背負っている、という証拠ですよね。ミスもあったので勝ててよかったというところと、自分の責任というところは間違いなくあったと思いますが、それだけの責任と覚悟をもって、ぎりぎりのところで全員がプレーしているということです」 浮嶋敏前監督の電撃辞任に伴い、コーチから昇格する形で9月1日に急きょ就任した山口監督にとっても、リーグ戦6試合目にして初めて手にした白星だった。 現役時代はガンバ大阪で、300試合超のJ1リーグ戦に出場。名ディフェンダーの系譜に名を刻んだ43歳の指揮官は「6試合とかそんなことはもう過去の話。ホームでサポーターの前で勝てた事実がすごく嬉しい」と言い、こう続けた。 「やるべきことと整理することは、勝とうが負けようが常にあるもの。そこはぶれずに、一喜一憂しすぎずに覚悟と信念を持ってやると監督になったときから決めていた。選手がしっかり反応してくれているのが、自分がぶれずに進めた一番の要因だと思う」