なぜ森保ジャパンは崖っぷちの豪州戦に勝てたのか…「4-3-3」に戦術変更するなど一変した指揮官の采配と選手の危機感
アジア最終予選で1勝2敗と黒星が先行し、7大会連続7度目のワールドカップ出場へ黄信号が灯っていた日本代表が、死闘の末にオーストラリア代表を撃破した。 ホームの埼玉スタジアムで12日に行われた第4戦。システムを[4-2-3-1]から[4-3-3]へ変更した森保一監督は、さらにインサイドハーフに今最終予選で初先発の守田英正(26・サンタ・クララ)と田中碧(23・フォルトゥナ・デュッセルドルフ)を起用。田中は開始8分に代表初ゴールを決めて先制し、指揮官の期待に応えた。 後半25分に直接フリーキックを叩き込まれて同点とされたが、終了間際の同41分には途中出場のFW浅野拓磨(26・ボーフム)が強引に放ったシュートが相手のオウンゴールを誘発。開幕から3連勝だったオーストラリアを2-1で下した。 中国代表を3-2で下したサウジアラビア代表が連勝を4に伸ばし、オーストラリアを抜いてグループBの首位に、ベトナム代表に3-1で逆転勝ちしたオマーン代表が日本と勝ち点6で並び、総得点で上回って3位にそれぞれ浮上。日本は4位と苦しい位置につけるものの、強敵からもぎ取った白星を残り6試合での巻き返しにつなげる。
先制点はインサイドハーフで起用された田中碧
勝利を告げる主審のホイッスルが鳴り響いた瞬間、最前線に位置取っていた田中はピッチ上で仰向けになって、埼玉スタジアムの上に広がる夜空を見つめた。 両足に異変が生じたのは試合終了間際だった。少しでも負荷をかければ、たちまちつってしまう。交代枠はひとつ余っていたが、交代できる回数がすでに上限に達していた。チームメイトに相談した上で、田中はポジションをインサイドハーフから上げていた。 「90分間立ちたい気持ちはありましたけど、自分の全力を100%出し続けないと力的にも通用しない相手だったので。最初から飛ばして、最後は走れませんでした」 出し惜しみなどするものか――こう誓っていた田中が先制点を決めた。 開始わずか8分。ペナルティーエリアの左角あたりまで攻め込んだMF南野拓実(26・リバプール)が、反転から迷わずに右足を一閃。強烈な弾道はMFジャクソン・アーバインの左足をかすめてわずかにコースを変え、クリアしようと必死に伸ばしたDFアジズ・ベヒッチの左足も届かずに対角線を切り裂いていく。 最後にボールを収めたのは、ペナルティーエリア内の右側へ攻め上がっていた田中。右足でのトラップから身体の向きを変え、間髪入れずに再び右足から放たれた一撃がオーストラリアのキャプテン、守護神マシュー・ライアンの牙城に風穴を開けた。