大坂なおみは全豪OP決勝進出をかけた”因縁”のセリーナ・ウィリアムズ戦に勝てるのか?
「前の試合と違ってサーブが遅く、適応するのにちょっと時間がかかったけど、そのなかでリターンがどんどんよくなり、ベースラインでの打ち合いも上手く把握できました」 実は第1セットの第4ゲームから、謝のファーストサーブの場面でもベースラインのやや内側にポジションを取っていた。アンフォーストエラー(凡ミス)を連発し、謝にあっさりとキープされた第2ゲームの反省を、ほんのわずかな距離ながら前へ出る勇気と適応力、そして修正力に変えた。 大坂のパワーとテクニックに押されたなかで謝はブレークする糸口をつかめない。大坂が犯したアンフォーストエラーは「14」で謝は「23」。大坂のスキのなさを前に、得意とする変幻自在なショットを繰り出せなかった謝は、唸るしかなかった。 「落ち着いて自分のプレーをすれば、なおみはいつでも優勝できる。みんなわかっていることだけど、彼女は本当に素晴らしい選手。だから、今日の負けは受け入れます」 さて大坂vsウィリアムズ戦である。 強敵ハレプとの大一番を前にウィリアムズも、大坂の準々決勝を気にかけていた。 「彼女の試合はいつも見ているし、もちろん彼女も私の試合を見てくれていると思う」 ウィリアムズにとって四大大会最後の優勝が2017年の全豪オープン。この4年の間に長女を出産し、世界ランクも一時は454位まで下がった。マーガレット・コート(オーストラリア)が持つ、歴代最多の四大大会24勝にあとひとつと迫りながら足踏みが続いていた元女王は、今大会は見事にパワーアップ。今年で40歳になるが、年齢を感じさせない充実した試合内容を見せている。4年ぶりの頂点。そして、大坂との再戦へ「面白い試合になる」と笑顔を浮かべた。 「私にとってとても長いオフシーズンだったから、正直、どの試合に勝っても嬉しい」
過去3度ある2人の直接対決の成績は大阪の2勝1敗だ。2018年3月のマイアミオープンの1回戦が両者の初顔合わせで、大坂がストレートで勝ち、試合後、ウィリアムズが会見を拒否して騒動になった。2度目は同年9月の全米オープン。この試合も大坂がストレート勝利して世界の頂点に立ったが、ウィリアムズの敵は主審だった。観客席にいたコーチから指示を受けたと、主審から警告されたことに猛抗議。ペナルティを科せられ、試合に集中できる状況ではなかった。 3度目の対戦は2019年8月のロジャースカップ準々決勝で大坂はストレートで敗れている。この試合が公式戦では最後の顔合わせとなるが、1月29日にアデレードで行われたエキシビションマッチでも両者は対戦。非公式試合ではあるが、大坂はフルセットの末に敗れている。ウィリアムズの力感と上手さが際立っていた。 4度目対決の勝敗を決めるのは集中力だろう。ミスを犯した方が負ける。 最大のライバルとの一戦を前に大坂はこう言う。 「ハレプもそうだけど、セリーナもネットの向こう側に見ると威圧感さえ感じてきた。でも、ムグルサのようなレベルの高い選手に追い詰められたなかで勝てたことで、自信と言っていいのかどうかわからないけど、以前よりも安心して自分の試合ができるようになっていると思う」 2年前の自分とは違うと、大坂も心身両面で自身が遂げてきた変化に自信を見せる。2年ぶり2度目の全豪制覇にスキはない。両者共に最高のコンディション。決勝進出をかけた舞台でどんなドラマが刻まれるのか。