コロナ自粛緩和 世界で戻りつつある“日常”つかむ経済データ
新型コロナウイルスの新規感染者の増加ペースが鈍化する中、欧米各国で行動制限を緩和する動きが出ています。少しずつ戻りつつある経済活動のビビッドな動きをどうつかむか。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【写真】東京五輪「中止」でも日本経済は終わらない
レストランの予約状況に動き
世界的に経済活動再開への期待が高まる状況下で、その動きをいち早く察知するには、公表頻度が高く、速報性に優れているデータに注目する必要があります。記録的悪化を示した4月の米雇用統計がそうであったように、月次で発表されるオフィシャルデータは「鮮度」に問題を抱えています。
米国では多くの州で厳格な外出制限が継続されている反面、一部の州は段階的に経済活動が再開され、ここ数日は飲食店にもその動きが波及しています。そこでレストラン予約サイト「オープンテーブル」のデータに目を向けると、テキサス、ジョージア、フロリダ、アリゾナ、サウスカロライナ州などの制限が緩い地域では、5月に入って以降の予約状況に動きがみられます。これら地域の予約状況は、4月下旬まで前年比100%減(≒0件)の状態でしたが、5月11日は前年比8割減程度となり、米国全体でも前年比▲96%となりました。 また一部地域で飲食店の営業が再開されたドイツでも、前年比▲94%へと100%減から脱け出し、経済活動再開の初期の兆候が認められています。 今後、NY、ロサンゼルスなど大都市で制限の緩和が想定されていく中、こうしたリアルタイムデータはその反発力をつかむ一助となるでしょう。
小売・娯楽施設など外出持ち直し
Googleの「グローバル・モビリティ・レポート」も注目です。地図アプリの検索結果などを基に作成されたこのデータによれば、5月7日は世界的に小売・レクレーション関連施設(スーパーや公園などは含まない)への外出が持ち直し傾向にありました。こうしたトレンドは、Appleの「移動傾向レポート」でも示されており、特に自動車による外出が持ち直しています。自動車による移動は、公共交通機関を避ける動きが含まれているため割り引いて見る必要はありますが、経済活動が復活しつつあることは事実でしょう。これらデータは「日常」が戻りつつあることを映し出していると考えられます。 上記の通り、米国では一部の州で制限が緩和されつつありますが、そうした動きは欧州でも広がっています。ドイツでは5月中旬から飲食店を含む全店舗やホテルなどの営業再開が許可される見込みであるほか、フランスでは5月11日から小売店の営業が再開し外出許可証がなくとも近距離の外出が可能になり、イタリアでは5月18日から小売店の再開が予定され、6月1日からはレストランや理髪店などの営業も認められる見込みです。 日本は政府の緊急事態宣言の下、人々の自粛によって経済活動は大幅に停滞したままですが、「宣言」が解除され自粛要請が緩和される際には、こうしたデータが注目されます。
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