GDP大幅マイナス……でも「景気は緩やかに回復」しているらしい
政府は2月の「月例経済報告」を発表しました。17日に発表された2019年10-12月期の実質GDP(国内総生産)は前期比年率▲6.3%という、目を疑うような弱さだったにもかかわらず、景気の総括判断は「緩やかに回復している」で据え置かれました。以下、政府の景気判断据え置きの背景と、そこから示唆されることを一問一答形式でみていきます。(第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミスト) 【写真】10~12月期GDP、年率6.3%減 新型肺炎の影響で消費はさらに停滞か
Q:そもそも「月例経済報告」とは?
内閣府(政府)は毎月、日本経済の景気認識を示しています。GDPの約6割を占める個人消費をはじめ、生産、輸出、設備投資といった企業活動、さらには雇用、物価などあらゆる項目について経済指標を精査し、官庁エコノミストが総合的に判断します。そうした景気認識は経済政策の策定に役立てられます。 なお、政府は景気動向指数という経済指標を作成し、それを機械的に評価した景気認識も示していますが、月例経済報告では特殊要因を加味したり、統計のノイズを取り払ったりすることで、エコノミスト的視点を加えています。
Q:2月の景気判断はどうなった?
景気の総括判断は「緩やかに回復している」で据え置かれました。個別項目に目を向けると「生産は、引き続き弱含んでいる」、「輸出は、弱含んでいる」「設備投資は、緩やかな増加傾向にあるものの、一部に弱さがみられる」として、いずれも下向きの判断が下されています。他方、総括判断の「回復」と整合的なのは「雇用は、改善している」と「個人消費は、持ち直している」の2項目です。つまり、内閣府が「景気は緩やかに回復している」とするその根拠は、消費と雇用の底堅さということです。
Q:個人消費は増加しているのか?
ここが最も重要なポイントです。そこで昨年10-12月期のGDPに目を向けると、まず全体の成長率は前期比年率▲6.3%と極めて大幅なマイナスでした。日本経済の潜在力とされる成長率が0%台後半であることを踏まえると、この数値がいかに弱いかが分かります。そして内閣府が「持ち直している」と判断した個人消費は、前期比年率で▲11.0%という目を疑う弱さでした。