吉沢亮のCM契約解除では終わらない…「泥酔不法侵入」の火消しに走るアサヒビールを待ち受ける“本当の試練”
連載「情報戦の裏側』をフォローすると最新記事がメールでお届けできるので、読み逃しがなくなります。 ● 吉沢亮が浮き彫りにした ビール産業の“不都合な真実” 【この記事の画像を見る】 新年早々、アサヒビールの迅速な「火消し」が注目を集めている。 そもそもの発端は1月6日午後、人気俳優・吉沢亮さんが泥酔して自宅マンションの隣室に無断侵入したという速報が流れたことだった。警察の調べに対して吉沢さんは、「記憶を飛ばしました。トイレをしたくて、勝手に入ってしまったと思います」と述べていたという。 吉沢さんといえば、「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」の広告キャラクターに起用されており、この年末年始にもCMが多く流れていたのでご覧になった方も多いだろう。当然、アサヒビールにはこの広告をどうするのかと取材が殺到。当初は「事実確認中」と対応をしていたが、同日21時ごろには、公式サイトから吉沢さんの画像を削除。翌7日には「アルコール飲料会社として事実を容認できるものではございません」としてCM契約を途中解除すると表明したのである。 実はアサヒビールは昨年9月、「責任ある飲酒」を推進する専門組織「Responsible Drinking部(レスドリ部)」を新設している。「飲酒に対する正しい知識を持った人を増やしていくこと」を主眼に置いた活動は、わずか3カ月で、自社の看板ブランドのイメージを担う人気俳優に「無責任な飲酒」という形で顔に泥を塗られてしまう。 アサヒビール側の怒りは容易に想像できる。“秒”で契約解除をして火消しに動くのも当然だ。ただ、そんなアサヒビールには大変気の毒な話なのだが、この騒動による「受難」はこれからが本番だと思っている。
オールドメディアは契約解除で一件落着という感じだが、ネットやSNSはそうならない。「人気イケメン俳優の酒癖の悪さ」が注目を集めたことをきっかけに、国内ビール業界がこれまでウヤムヤにしてきた「不都合な真実」に目を向ける人が増えているからだ。 まず多いのは、「なぜ日本は人気俳優をCMに起用するのか」ということだ。ご存じの方も多いだろうが、世界では酒の広告は何かしら規制されることが多い。日本のように人気のある俳優やタレントが、ビールを飲み干して「やっぱ最高!」なんてCMを流すことができる国は少ない。 そのため今回の騒動をきっかけに、「海外みたいに有名人CMをやめればこんなトラブル起きないでしょ」「そもそも日本ってビールCM多すぎじゃない?」なんてやぶ蛇な話になっているのだ。 これはビール業界にとって避けたい話題であることは言うまでもないが、オールドメディアにとっても都合の悪い話だ。人気タレントを起用する広告は、巨額マネーが動くのでマスコミにとっても大事な収入源。中でも大手ビール企業は「大のお得意様」なのだ。 ただ、実はこのような話題よりアサヒビールが恐れていることがある。それは吉沢さんが「酒に酔って警察沙汰になった」という点に注目が集まり、「飲酒と犯罪行為の関係性」が論じられるようになることだ。 こういうムードが盛り上がると、ビールをはじめとした日本の酒は、「タバコ」と同じ運命、いやそれ以上に厳しく規制されてしまう恐れもある。 昨年2月の『ストロング系酎ハイの次は「居酒屋の飲み放題」が絶滅する!“タバコの次は酒”に現実味』という記事で詳しく解説をしたが今、WHO(世界保健機関)が各国政府にプレッシャーをかけてアルコールの規制強化を求めている。 例えば、アメリカでは1月3日、保健福祉省(HHS)のマーシー医務総監が、アルコール飲料のラベルに、がんリスクへの警告を含めるよう勧告した。「タバコ並」にすべきだというのだ。もし実現すれば、同国でアルコールに警告が表示されるのは1988年以来のことだという。