「近い関係でも、やっぱり距離感が大事なんです」――水谷豊の語る「相棒論」、家族、そして自分
ティーカップを片手に難事件を次々解決する刑事・杉下右京は、今や水谷豊(70)の代名詞。世代によっては『熱中時代』で演じた個性的な小学校教師が忘れられないという人もいるだろう。どんな役を演じても、強烈な印象を残す。が、その実像はミステリアス。「そうですよね。昔から、自分でも自分がどんな人間かわからないんだから(笑)」。子役から芸能界に入り、芸歴はおよそ60年。これまでの軌跡を振り返りながら語った、“相棒”、“家族”とのリアルな関係、そして“本当の自分”。(取材・文:山野井春絵/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル特集編集部)
もう怒ることってないんです……“100% 陽キャ”
役柄と、過去の報道のイメージから、俳優水谷豊には、「難しい人かもしれない」という不安を抱いて向き合った。しかし、初めて目の前にした国民的俳優は、驚くほど気さくで、明るい。いわば“100% 陽キャ”。 「もう怒ることって、ないんですよね。僕ね、一生分の怒る量は決まってると思う。若いときは散々怒りましたけど、怒らなくてもいいことに怒ってた。今はね、面白い感覚で、そういう感情は全部芝居で見せればいいじゃない、と思う。現実世界で怒って、人生を不愉快になんて、しなくていいと思うなあ」 チンピラから熱血教師、事件記者に元キャリアの刑事……これまで演じてきたキャラクターの印象がどれも濃すぎて、本当の水谷豊像は一般の人にはわかりづらい。 「よく言われるんですよ、なんでしょうね。思えば、昔から言われてましたね。本当はどんな人なんですか、とかね」 子役時代から芸歴をスタートさせて、59年。ここまで長く俳優の仕事を続けてこられたのは、なぜだろう。 「不思議なんですけど、僕は自分がやれることしかやっていない。でも、結果こうなっていることは、とてもラッキーだったと思う。と、自分のことはそう思うんだけど、ほかの方が長く続けているのを見ると、『すごいな、よくもまあ、そんなに長くやれるな』ってびっくりします」 初主演は、14歳。手塚治虫の漫画が原作の『バンパイヤ』というドラマだった。以来、数々の作品で、主演をこなしてきた。長年「主演俳優」を続けるプレッシャーは……。