「近い関係でも、やっぱり距離感が大事なんです」――水谷豊の語る「相棒論」、家族、そして自分
「いや、若いときは逆に、仕事を続けていると不安になったものです。この世界にずっといたら、社会から置いていかれてるんじゃないかって、そんな感覚に襲われる。一回離れて、ちょっと普通に過ごしてみたい、と。で、よく休んでましたね。それで不安になるというのはなかったです」 「もしも休んでだめになるなら、それまでの人間だな、と思ってましたよ。そういう意味では、割り切りは常にあった。だから休みの間は、もう楽しいですよね。1、2年、何もしないというときもありました」 自らが出演した作品は、すべて放送前にチェックする。しかし、評価についてはいっさい気にしない。自ら監督をした作品についても、だ。 「作品については、もう自分で判断してしまいます。目に見える評価はあるかもしれないけども、誰かが楽しかったって言ってくれればそれでいいんです。そこを目指して、作品を作っています。だから作っていないときは、僕のことは忘れてくださいという気持ち。これは、ずっと昔からそうです」
共演者との不仲説と、次の相棒
プレシーズンから数えて、23年。『相棒』は国民的な連続ドラマに成長した。 一方で、相棒役を決めるのも、役からおろすのも水谷豊。“帝王”には誰も逆らえない――そんな噂が流布されることもあった。 「これね、もう、面白いから書くんでしょ。全部嘘なんですから。仲の悪い相棒なんて、ひとりもいません。みんな仲いいですよ、いまだにね。及川みっちゃん(光博)なんて、『なんで僕たちこんなに仲がいいのに』って怒ったりしてね。でも僕は、いちいち抗わなくていいよって言ったんです。大丈夫、ドラマを見れば、わかる人にはわかるって。面白いもので、こういうデマって嘘だとしても、イメージとしてはある種の逆風。でも逆風は、来ると、フウッと上がんです。追い風はそのまま勢いをつけてくれるけど、それ以上には上がらない。落ちるようじゃ、そこでおしまいなんだけど。向い風、逆風は、もっと上がるチャンスなんです」 相棒役を水谷が独断で決めているというのも、事実とは異なるという。 スタッフと話し合い、配役のアイデアを出し合うことはある。