「近い関係でも、やっぱり距離感が大事なんです」――水谷豊の語る「相棒論」、家族、そして自分
「そもそも寺脇(康文)の場合はね、もうちょっと早くやめて、自身が主役になる作品をやるべきだと本人と話していたんですよね。意外と長く続いてしまったんですけどね。次の及川みっちゃんは、彼は基本、アーティストとして、ライブツアーで忙しいわけですよ。それを犠牲にして、3年も付き合ってくれた。ナリ(成宮寛貴)もね、若いから、もっといろんな役をやって、次の世界へ行くべき人。相棒役って、長くやると大変なんですよ、スケジュールも含めてね。みんなにありがとうと、感謝の気持ちしかないんですが、これが報道では『水谷が気に入らないから下ろした』とかなっちゃう。そんなこと、一度もなかった」 「でもね、ソリ(反町隆史)のときは、不仲の噂が出回らなかった。仲良く受け止められたようで、何よりなんですが、ソリとは『なぜか仲悪いって言われないね、今回』って拍子抜けしてましたよ(笑)」 次の相棒役については、もうアタリをつけているのかと尋ねると、首を振った。 「もう、相棒のことは考えなくていいでしょうね。だってもう、これ以上、誰を相棒にすればいいんですか」 『相棒』シリーズが終了したら、全国のファンががっかりするだろう。女性か外国人はどうかと進言すると、水谷は大爆笑した。 「多様性の時代ね。確かに、確かに(笑)」
娘・趣里の恋愛には「寛大ですよ」
水谷豊の私生活における相棒といえば、伊藤蘭だ。 結婚生活は34年、夫婦喧嘩をすることはめったにないという。 「まったく違う2人がたまたま夫婦になって、ずっと一緒にいられる、それは奇跡です。だから今のこの状況は、本当にラッキーだと思いますね。長く付き合う、友達でもそうですけど、ちょうどいい距離を保つこと。ずけずけと入っていくのは、よくない。近い関係でも、やっぱり距離感が大事なんですよ。あとは、時間ですかね。家族なら、僕と蘭さんの時間があって、僕と娘、娘と蘭さんの、また3人の時間がある。さらに、ひとりの時間がある。これらの時間配分のバランスが大切なんじゃないかと思いますね」 夫妻の一粒種が、近年活躍めざましい俳優、趣里だ。 趣里がこのビッグネーム夫妻の娘である事実は、しばらく知られていなかった。親の名前で世に出たくないという、趣里の強い思いがあったからだという。 「親と比較されたり、言われたりするのって、いやじゃないですか。よくわかるんですよ、僕にも。いつか、自分の世界が確立できたら、親のことだって平気で話せるようになるんじゃないかな。僕は本当はね、彼女が幼いときから、『こっちの世界にはこないでくれ』って言い続けてきたんですよ。天国を見られればいいけど、地獄もある。蘭さんは、彼女の好きにさせた方がいいと。『こっちの世界なんて、どんな男がいるかわかんないよ』って言ったら、これ藪蛇でしたけど(笑)。でも結局、本人がやりたいことを、親が止める権利はないですね」 年ごろの娘を心配しながらも、生き方は本人に任せる。 さらに恋愛についても「僕は寛大ですよ」と両手を広げて見せた。 「昔、娘のボーイフレンドがうちに遊びにきたんですよ。帰りは僕が車で彼を送って行きましたね。…だけど、なんで送ったんですかね。あれ、なんでだろう、僕が送れば、娘は確実に僕と一緒に帰ってくるという計算があったのかな?」 趣里の主演映画の演出方法に対して、水谷が激怒したという報道もあったが。 「あれは娘からきちんと相談があったんですよ。僕もね、24歳のとき、キネマ旬報で主演男優賞をもらった『青春の殺人者』の中で、全裸になった。だから娘にも言いました。『ダダにもね、そういう経験があるけど、やって良かったと思う作品になった。これも多分そうなると思うよ。自分でそこに魂を傾けてやってみたら』って。むしろ背中を押したんだけど、喧嘩したことになってる。『ちょっと、港区の皆さん、練馬区の皆さん、僕は激怒してませんよ~』って、言って歩くわけにいかないでしょ(笑)。だから、いつか、神様は見てますよ、大丈夫って、これもね」