1位通過でACL決勝T進出決定の神戸イニエスタが語るアジアで強い理由「メンタリティーが変わった」
国境をまたいだ移動を伴うがゆえに、新型コロナウイルス禍に見舞われた今シーズンのACLは、各国の国内リーグ戦をさらに上回る長期中断を余儀なくされた。 神戸の場合はホームでジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア)に5-1で、アウェイで水原三星(韓国)に1-0で連勝し、グループGの首位に立った2月19日を最後に中断。開催地未定のまま10月下旬にセントラル方式で再開されることが一度は決まったものの、コロナ禍が収まらない状況を受けて、先月下旬からカタールで集中開催される方式に変更された。 しかし、ここで予期せぬ事態が起こる。マレーシア政府からカタールへの渡航許可が下りなかったジョホール・ダルル・タクジムが棄権。神戸が大勝した一戦が無効扱いとなったグループGは水原三星、広州恒大の3チームで争われる形に変わった。 「マリノスとFC東京を除いて、自分たちのプレースタイルを知らないチームがこのACLには多い。お互いさまかもしれないが、そこも上手 く生かしていくべきではないかとみんなには話している」 チームメイトたちの集中力とモチベーションをさらに高めるために、最高峰の舞台であるUEFAチャンピオンズリーグを何度も戦ってきた濃密な経験も踏まえながら、機会を見つけてはキャプテンとしてさまざまなメッセージも発信してきたイニエスタは、Jリーグとは異なるアジアでの戦いを「はっきりしているのは、100%でプレーしないとやられる、ということ」と位置づける。 「韓国のチームなのか、中国のチームなのかは関係ない。世界のサッカーレベルが縮まってきているなかで、アジアのレベルはどんどん上がっている。常にベストを尽くし、どのチームと対戦するにしても100%で戦わなければいけない、という意識をもち続ける必要がある」
ともにACLに挑んでいる横浜F・マリノス、FC東京とともに、カタールでは厳戒態勢下に置かれている。 移動は同宿しているホテルと練習会場、そして試合会場の間だけに制限され、散歩を含めた他の外出はいっさい禁止。ひとつのチームに関わるすべての関係者を大きな泡に包むようにして外部との接触を断つ、新型コロナウイルス感染予防のための「バブル」という措置が徹底されている。 カタール入りした直後にドーハ国際空港で行われたPCR検査は、その後も6日に一度の頻度で実施されている。練習と試合以外は軟禁状態にあると言っていい、息が詰まりそうな日々を「大会が最後まで、安全に開催されるために必要な制限がある」とイニエスタは当然と受け入れている。 「ホテルでは可能な限りリラックスするようにしている。食堂で過ごしている時間が一番長いし、あとはジムを使える時間とか、選手それぞれが治療を受ける時間とか、フリーの時間にはチームメイトたちと集まってゲームをするとか、あるいは(日本にいる)家族と話すなどしてみんなは過ごしている。難しさはあるけど、決勝までここで過ごして、いい形で大会を終えたい」 ACLと重複する可能性があったリーグ戦をすべて前倒しで消化した神戸は、9勝9分け15敗、勝ち点36の12位でカタール入りした。他チームの今後の結果次第ではさらに順位を下げかねず、唯一、残されている19日の最終節も帰国後の自主隔離措置があるため出場はおそらくかなわない。 何よりも19日には、同じカタールで9月から10月にかけて集中開催された西地区を勝ち抜いた、ペルセポリス(イラン)が待つACL決勝が組まれている。アジア制覇を見すえる神戸はすでにユース所属の選手16人を2種登録し、最終節を若い陣容で戦う準備も整えている。 今シーズンに関しては国内での戦いは終わった、と受け止めているイニエスタは「チームレベルではいい結果を残せなかった」と総括。その上で胸中に募らせてきた忸怩たる思いを、今後に待つACLの戦いを勝ち抜くモチベーションに変えたいと努めて前を向いた。 「個人的なコンディションに関してはすごくよかったシーズンだった。連戦を何度もこなしてきたなかでいい感覚でリーグ戦を終えられたし、それはいまも続いている。この先も出場できる試合はすべてプレーしたい。そのために練習をして、身体のケアをして、準備をしてきたので」