じつは「どちらがいいコーチでしょう」じゃなかったんだ…プロの指導者だけに伝えた「予想外の問いかけ」と、衝撃の答え
2人のコーチの「強み」と「弱み」
リンツの発したメッセージは、異なるタイプの指導者を比較して、「どちらが良いか優劣を決めましょう」というものではなかった。 それとは対照的に、両者の特徴(強みと弱み)をきちんととらえたうえで、「それぞれに必要なアプローチがどのようなものかを考えましょう」という、きわめて明確な意図が込められていた。 では、映像に映っていた2人のコーチの強みと弱みは、具体的にどこにあるのか? 前者の女性指導者に対してはまず、子どもたちが委縮しているようすが見てとれた。この点は、この女性指導者の明らかな弱みであり、子どもたち自身が問題を解決する機会を奪われていることを修正する必要があるだろう。 一方で、ゲーム中の出来事に対する指摘の適切さからは、選手たちすべきことを整理するサポート役としては、十分に機能しているといえ、この女性指導者の強みとなっている。 後者の男性指導者はどうか。
「同じミスを繰り返す子」がいる理由
男性指導者は、子どもたちの自主性を重んじており、彼ら自身の「考える力」を引き出そうとしている点は非常に素晴らしいと感じられた。これは彼の強みだろう。 一方で、彼の率いるチームには、同じミスを繰り返している子や、具体的にどうしたらいいのか迷った状態のままプレーを続けている子が多かった。そのようすから、判断やプレーの基準を設けたり、選手のヒントになる問いかけが充分になされたりしていないことが推測され、この男性指導者の弱みととらえる必要がありそうだ。
自分の強みを最大限に活かした成功例
ドイツのスポーツ界でよく聞く言葉に、次のようなものがある。 「〈自分の弱さ〉を和らげることで〈自分の弱さ〉で負けることを避け、〈自分の強み〉とともに戦うことで勝つことができるようになる」 その含意は、指導者育成とは「どの指導者も同じような枠にはめることではなく、それぞれの指導者のもつ資質をベースにして、それぞれの強みを引き出し、弱みを抑えるためのアプローチが必要だ」ということだ。 「自分の強みを理解し、それを最大限に活かして活躍した指導者」の具体例として、リンツはクリストフ・ダウムの名前を挙げた。なぜダウムなのか?