クロップ率いるリヴァプールがCL決勝で見せた輝き。ジョーダン・ヘンダーソンが語る「あと一歩の男」との訣別
9シーズンにわたって指揮をとった名将ユルゲン・クロップの退任により、ひとつの時代に終わりを告げたリヴァプール。本稿ではクロップとともに新たな黄金時代を築き上げたジョーダン・ヘンダーソンの自著『CAPTAIN ジョーダン・ヘンダーソン自伝』の抜粋を通して、主に2015-16シーズン以降にリヴァプールが歩んだ軌跡に焦点を当てて振り返る。今回は2018-19シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝、トッテナムとの同国対決となった試合について。 (文=ジョーダン・ヘンダーソン、訳=岩崎晋也、写真=ロイター/アフロ)
全員に大きな力を与えたジニの短いスピーチ
決勝戦の4日前、木曜日の午前に、ミリー(ジェームズ・ミルナー)と僕はメルウッドで選手だけのミーティングを開き、みなの前に立った。そんな仰々しいものではなく、普段とちがうことを言ったわけでもない。ただ前年のレアル・マドリード戦の経験を生かして、今回はもっとうまく準備しようという話をした。スティーヴィー(スティーヴン・ジェラード)との会話で、過去の経験を有効に使うことが重要だと気づいたからだ。 去年のキーウでの決勝では、まえの晩に眠れなかったが、今回はマドリードのホテルではるかに落ち着き、寛いで過ごすことができた。少し早めにベッドに入り、うまくいくことを想像した。すぐに眠りに落ち、しっかりと休むことができた。自分も、またほかの選手たちも、2018年より余裕があるのがわかった。試合当日は、負けるはずがないという気持ちだった。きっと自分たちの時間になる、準備は万全だ。 こうして、僕は人生最大の試合で先発出場した。ポジションは8番で、真ん中のファビーニョの右。左側にはジニ(ワイナルドゥム)がいる。何もかも完璧だ。いまこそやるしかない。 ジニは普段、試合前に話すタイプではない。だがこのときはその習慣を破った。試合開始のまえに、チームが更衣室から出るタイミングを待って、短いスピーチをしたのだ。このチームの一員であることを誇りに思っている。いまこそピッチに出て、世界に俺たちの強さを示すときだ、と。ジニは寡黙で控えめな性格だ。その彼がこんなふうに前に出たことは、全員に大きな力を与えた。