泥沼化も? 波乱含みの米大統領選 5つの注目点
アメリカ大統領選は共和党候補にトランプ大統領(74)、民主党候補にバイデン元副大統領(77)がそれぞれ正式に決まりました。今月末にはテレビ討論会がスタート。新型コロナウイルス禍の選挙戦は11月3日の本選挙に向けて論戦がいよいよ佳境を迎えます。世論調査ではバイデン氏が優位ですが、トランプ氏がじわじわ追い上げており、選挙結果は予断を許さない情勢です。アメリカ政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授に、混迷の大統領選を展望してもらいました。 【図表】米大統領選のキーワード 「一般投票」「選挙人」「勝者総取り」とは?
◇ 11月3日のアメリカ大統領選挙まであと40日強となり、予備選から始まった長い選挙戦のゴールが見えてきた。トランプ大統領の再選なのか、バイデン氏の勝利なのか。今後の展開を考えてみたい。
(1)激戦州をめぐる攻防
アメリカ大統領選挙は50州と首都・ワシントンで投票が行われる。いまのところ、「今日、大統領選挙が行われたとするなら、どちらに投票するか」という調査については、全米レベルでは6.5ポイントほどバイデン氏が支持率では優勢だ(リアルクリア・ポリティクスがまとめた複数の調査の平均値、9月19日現在)。ただ、その数字はあまりあてにならない。共和党支持者と民主党支持者の政治行動がはっきりと分かれる政治的分極化で、この51の戦いのうち、40程度は既にどちらが勝つかほぼ確実にみえているためだ。
大統領選挙でカギを握るのは10ほどの数の激戦州(スイングステート)である。その中でも重要なのはアリゾナ、ウィスコンシン、ノースカロライナ、フロリダなどの数州の動向だ。最終的には各選挙区に割り当てられた計538の選挙人のうち、過半数である270の選挙人をとれば当選する。2016年選挙では11月の一般投票(今回は3日)において全米合計で300万票もトランプ氏が負けたが、メーン、ネブラスカ以外のほとんどの州が採用している選挙人の「勝者総取り制度」もあり、12月の選挙人投票では70票以上クリントン氏を上回った。大統領選挙の一般投票(本選挙)は各州の選挙人を獲得するための選挙で、その選ばれた選挙人の投票によって、大統領が正式に選出される「間接選挙」の仕組みを採っているためだ。今年の戦いでも、たとえ一般投票で負けても激戦州で競り勝っていけばいいというのがどちらの陣営の共通戦略である。