泥沼化も? 波乱含みの米大統領選 5つの注目点
(3)白人ブルーカラー層
激戦州の中には、ミシガン州やウィスコンシン州などのいわゆるラストベルト(錆びついた工業地帯)も含まれており、両陣営は「郊外」票とともに白人ブルーカラー層からの票の収奪戦も続けている。2016年選挙ではトランプ氏が潜在的には棄権するケースも少なくない(あるいは民主党支持となる)この層をうまく動員できたことも大きな勝利の要因となった。 今回、バイデン陣営はこの白人ブルーカラー層の取り込みに力を入れている。バイデン陣営の「Build Back Better(より良い復興を)」というスローガンの下に掲げている公約の中には、米国製品の購入に重点を置いた製造業の促進なども含まれている。これなどは、トランプ陣営の2016年のスローガンである「Make America Great Again(アメリカを再び偉大な国に)」とそっくりの部分もある。 そもそもバイデン氏はカトリックであり、白人ブルーカラー層にはカトリックが多い傾向があることもバイデン氏には追い風である(イタリア系、ポーランド系、アイルランド系などのカトリックはプロテスタント諸派に比べると、アメリカへの移住が本格化したのは19世紀半ば以降と遅い。トランプ氏はプロテスタントで、カトリックの大統領はケネディ以外存在しない)。 トランプ氏がこの白人ブルーカラー層をどうつなぎとめるのかが大きなポイントとなる。共和党大会の4日目は「トランプ大統領が職業政治家やエスタブリッシュメント(既得権層)のためではなく、普通の人々のために戦っている」というテーマの映像や発言が相次いだ。「われらの大統領」とうったえたのも、このつなぎ止め策の一つだ。バイデン氏は「左派の“乗り物”」であり、環境問題でシェールガスの採掘規制などを進めて、労働者の仕事を奪うという訴えが共和党大会では繰り返された。 また、トランプ陣営の度重なる中国批判は、中国やメキシコなどへの雇用流出について危惧するブルーカラー層の声を代弁しているのは言うまでもない。バイデン氏は「中国の台頭を許した20年間」の時の副大統領で、上院では外交委員、委員長も歴任し、「バイデン氏の責任」を追及するのがトランプ氏の立場である。一方、バイデン氏は「いま中国はいろいろな問題があるが、自分が大統領になればうまく対応をする」という立場を主張している。