米大統領選が本格化 トランプ再選に「若者の壁」が立ちはだかる?
今秋のアメリカ大統領選に向けた戦いが2月3日(現地時間)、本格的にスタートします。アイオワ州での党員集会を皮切りに、各地で開かれる予備選・党員集会を経て、各党の候補者が決まり、11月の大統領選まで論戦を戦わせます。共和党は現職のトランプ大統領の指名が確実といわれていますが、民主党は候補が乱立している状況です。トランプは再選できるのか。どんな大統領選になるのか。アメリカ政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授に寄稿してもらいました。 【図解】米大統領選の「党員集会」と「予備選挙」って?
◇ 2020年11月のアメリカの大統領選挙では、前回、アウトサイダー候補として注目を集め、当選したトランプ大統領(73)が現職として審判を受ける。トランプ大統領は、弾劾に向けた動きなどの逆風の中、熱狂的な支持者の後押しで再選を目指す。大統領を追い込んだはずの民主党側の候補者をみると、中道派と左派が対立している状況が続いている。大統領選挙の今後の動きを現時点の段階で展望してみたい。
「マラソン」に例えられる2つの長い戦い
4年に1度行われるアメリカの大統領選挙は、先進国では例があまりないほど長期間にわたって行われるため、マラソン競技に例えられてきた。この「マラソン」には大きく分けて2段階ある。第1の段階は民主、共和両党がそれぞれ党の大統領候補を選び出す予備選段階であり、両党の指名候補が大統領の座を争う本選挙が第2段階となる。 予備選段階は、年明けから夏までの「マラソン」の長い選挙戦の前半戦であり、夏の全国党大会に送り込む代議員を獲得する争いであり、選挙年の2月ごろから順次開かれる各州の「党員集会」(小規模の話し合い)か「予備選」(通常の選挙)で、どの立候補者に代議員を割り振るかが決められていく。
予備選段階で、真っ先に行われるのが、アイオワ州党員集会(2020年は2月3日)、ニューハンプシャー予備選(同2月11日)であり、その後、他の州の予備選・党員集会が開催される。3月3日には14州と米領サモアなどで同日に予備選・党員集会が開かれる「スーパーチューズデー」が待っており、毎回ここで多くの候補者が脱落し、絞り込まれる。ここが前半戦の山場となる。民主党の各立候補者は「スーパーチューズデー」終了の時点で各州の代議員獲得レースで圧倒的に優位となれば、党の指名候補になるための代議員の過半数(2020年民主党予備選では総数3979)の獲得にぐっと近くなる。 予備選段階はメディアの注目が序盤に集中することもあって、予備選・党員集会の日程も毎回前倒しされてきた。それもあって、予備選・党員集会が実際にスタートする前の半年間の「影の予備選(シャドー・プライマリー)」が非常に重要だ。 民主党側だけでなく、共和党側も予備選・党員集会を行うが、トランプ氏以外に有力な候補は立候補しておらず、形だけのものとなるとみられている。 第2段階は、それぞれの党の指名候補者同士が戦う本選挙である。大統領選挙の日は、11月の第1火曜日(正確には、「第1月曜日の後の火曜日」で、1日が火曜日となる日を除く)に、全米50州と首都ワシントンで行われる。全538の選挙人の過半数である270を勝ち取ると勝利となる。 大統領選挙では、メイン州とネブラスカ州を除いて、一般投票で最も多く票を集めた候補者が、その州の選挙人をすべて獲得するという「勝者総取り」となる。このため投票の得票率と選挙人の獲得数は必ずしも比例しない。そのため、得票数でほかの候補に及ばなかったが、選挙人投票で過半数を獲得して大統領になったケースが2016年のトランプ氏をはじめとして、過去に4回ある。11月の大統領選の本選挙の方も間接選挙であり、国民は各党の候補者に投票するものの、実際には「大統領選挙人」という人たちを選ぶことになる。選挙人は「12月の第2水曜日の後の最初の月曜日」に州ごとに選挙人集会を開いて大統領候補に投票を行う。11月の選挙の結果と異なり、全く別の候補に投票をした選挙人も過去の歴史の中ではごく少数だが登場する(2016年選挙の場合、7人と過去最大だった)。