泥沼化も? 波乱含みの米大統領選 5つの注目点
その激戦州の動向だが、現時点では何とも言い難い。バイデン氏が激戦州の多くでリードはしているが、トランプ氏が少しずつ追い上げるような形になってきた。有権者が“本気”に選挙のことを考えるようになるのは、レイバーデー(今年は9月7日)以後の本選挙の2か月であり、両陣営もこの時期に合わせて一気に動いていくためだ。両陣営は、激戦州の中でどの郡や市をどのようにPRし攻めたらよいのか、独自の世論調査などを繰り返しながら、テレビやネットの広告戦略を練り直していく。それに基づいて、激戦州の戦いが少しずつ変わっていく。今年はコロナ禍で遊説は最低限だが、それでもトランプ陣営はポイントとなる州で遊説を行っている。
(2)「郊外」めぐる陣地争い
今回の激戦州についての大きな傾向は、その州内でも温度差がある。一般的に州の中で「都市」部が民主党、「田舎」の地域に共和党の支持が多く、本当に重要になっているのが両党の支持が拮抗する「郊外」である。まずは「都市」と「田舎」の中間的な位置付けとなる、この「郊外」の取り合いを軸とした両党の選挙戦術が展開されている。 トランプ陣営は「都市」が人種差別反対デモで揺れる中、「法と秩序」で抑え込んでいくメッセージを伝え続けている。確かに、騒乱的な状況が広がれば広がるほど、トランプ氏にとっては郊外票を固めることができるかもしれない。デモ参加者が要求する警察の予算削減については「アメリカを危険にする」として「警察予算は絶対に減らさせない」というのがトランプ陣営のうたい文句だ。 逆にバイデン陣営にとってみれば「混乱を起こしたのはトランプ大統領のこれまでの政策や態度」という主張を続けている。郊外に住む高学歴の白人女性のトランプ氏に対する支持が伸び悩んでいるという指摘も少なくなく、バイデン陣営は8月中旬の民主党大会以降、「トランプ再選=暗黒」というレッテル貼りを急いでいる。 ただ、民主党大会でトランプ政権の4年間を「暗黒」と批判したのに対し、8月下旬の共和党大会ではトランプ氏が同じ言葉を使い、「バイデン政権こそが“暗黒”」と言葉を返した。共和党大会の方が1週間後という「後出しジャンケン」の優位を生かしたともいえるが、いずれにしろ、双方の陣営がそれぞれの出方を牽制しながら選挙戦術を展開している。