中間選挙で“信任” 「トランプ化」進むアメリカ政治
今回のアメリカ中間選挙では、民主党が下院で勝利したことで、日本のメディアでは「トランプ大統領はピンチ」という趣旨の報道が目立ちました。しかし、そんな単純な話なのでしょうか。アメリカ政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授に寄稿してもらいました。 【写真】強くて実は脆いアメリカ大統領 「弾劾」に必要なプロセスとは?
◇ アメリカ中間選挙は、共和党が上院の過半数を維持し、民主党が下院多数派を奪還した。両院とも共和党が多数派だったことを考えると、トランプ政権は1期目後半の向こう2年間、より難しい政権運営を迫られる。ただ、下院が多数派となる「分割政府」というねじれはおそらくトランプ氏の「想定内」だったというようにもみえる。上院の議席増などを見ると、実質的には引き分けで、むしろ、トランプ的なものがここまで定着したといえるかもしれない。
トランプ的議員が生き残る
共和党が支配する大統領府(ホワイトハウス)、上院と下院の一角を突き崩し、トランプ大統領を批判する女性候補が大勢当選したため、一見すると「民主党勝利」に映る。しかし、そもそも下院の場合、現職再選率は9割を上回るため、現職不在の選挙区が多いほど対立党の勝機が増す。共和党はライアン議長をはじめ、引退や上院・知事選にくら替えした議員らが40人を超えた。民主党はその空白を埋めるチャンスが元々あり、実際に数多くの選挙区で勝利していった。 その共和党の引退議員には、トランプ氏と距離を置く穏健派が目立っていた。今回の選挙結果ではトランプ的な議員が生き残ったわけで、トランプ的なものが一定程度、信任されたといえる。 そもそも現職大統領が中間選挙の応援演説を大胆に行うのは、アメリカ政治の「分極化」以前には考えにくかったことだが、トランプ大統領の場合、まるで自分の選挙のように全米を遊説した。大統領が中間選挙の遊説をするのは極めて異例だ。大統領と議会はそもそもチェックし合うのがアメリカ政治の基本だが、分極化が進む中、トランプ大統領は共和党のリーダーとして前面に出た。選挙を総括した大統領の記者会見では「30日で60集会を回った」という。そして、その記者会見では、勝利した候補者をたたえる前に冒頭で「最終週に応援演説を行った11人の候補のうち9人が勝利した。私が行かなければあり得なかっただろう」と自画自賛した。