Jリーグで19クラブが単年赤字…どう読み解けばいいのか?
これらのうち札幌、仙台、鳥栖、福島、長野、富山が2期連続の単年度赤字を計上。琉球に至っては4期連続の単年度赤字計上となったが、クラブライセンス剥奪の対象にはならない。ルール改定によって財務基準に抵触しなくなった点と赤字クラブの増加が、実は密接にリンクしている。 クラブライセンス制度の施行前は経営的に不安定なクラブが多く、ゆえに財務基準で厳しい項目が設けられた。2013年度で単年度赤字が17、そのうち3期連続赤字が5、債務超過が12を数えていたが、より厳格に適用された2015年度は単年度赤字が7、3期連続赤字と債務超過はともに0になった。 もっとも、各クラブを取り巻く財政的な環境は2017シーズンからスタートした、スポーツチャンネルの『DAZN』を運営・配信するイギリスのパフォームグループ(現・DAZN Group)と結んだ10年間、総額約2100億円の大型放映権契約とともに大きく変わった。 いわゆるDAZNマネーを原資として、例えば各クラブへ一律に支給される均等配分金はJ1で1億8000万円から3億5000万円へ、J2で1億円から1億5000万円へ、J3で1500万円から3000万円へアップ。積極的なクラブ経営へ転じる上で、特に3期連続の単年度赤字を禁止するルールは「一部のクラブに対して、過度に保守的な経営を判断させるおそれがある」という指摘が数多く寄せられた。 こうした活況を受けて、Jリーグでは2018年度から新ルールを施行している。続けて3期以上で単年度赤字を計上したクラブでも、連続赤字の最終年度における赤字額の絶対値を期末純資産残高が上回っていれば財務基準には抵触せず、よってライセンスは不交付とはならないと改定された。
琉球の単年度赤字と純資産残高を見れば2018年度が4800万円に対して5000万円、昨年度が3400万円に対して6500万円となっている。いずれも純資産残高が上回り、新ルールが適用された。2018年度決算で18、そして昨年度決算で19と単年度赤字を計上するクラブが再び増えてきた状況でも、前出の村山マネージャーは「ただし、経営状態はしっかりとチェックします」とこう補足している。 「債務超過のクラブについては、引き続き基準未充足によりライセンスの不交付という規約にします」 債務超過とは負債総額が資産総額を超え、純資産残高がマイナスになった状態を指す。20億1400万円もの巨大赤字を計上した鳥栖だが、純資産残高は2100万円となっている。2018年度に続いて大規模な増資を行うことで、債務超過を回避する計画が確認されていたと村山マネージャーは言う。 「経営が破綻しないようにチェックしてきたなかで、増資の計画についてはコミュニケーションが取れていました。最終的には債務超過に陥っていないので、コメントを申し上げることはありません」 先行発表された45クラブは12月期および1月期決算だが、水戸ホーリーホック、栃木SC、東京ヴェルディ、横浜FC、レノファ山口、SC相模原は新型コロナウイルスの影響で決算確定が延期された。3月期決算の湘南ベルマーレ、ジュビロ磐田、柏レイソル、Y.S.C.C.横浜はこれから確定を迎える。 全55クラブの決算が出そろうのは7月。単年度赤字を計上するクラブがさらに増える状況に直面しても、各クラブが行ってきた積極的な投資という、ポジティブな理由が背景には存在する。ただ、今年度決算に関しては、すでに執行されている予算を組み直さなければいけないクラブも出てくるだろう。