尚弥がいなかったらボクシングすらやっていない──世界王者・井上拓真が明かす「歯がゆかった日々」 #ニュースその後
5月6日、尚弥と挑戦者ルイス・ネリの一戦をメーンイベントに置く東京ドーム興行のアンダーカードに拓真の防衛戦がラインアップされた。同級1位・石田匠との指名試合。アンカハスとの激闘から2カ月半という短いスパンでもあり、ボクシングファンや関係者にも驚きをもって迎えられている。しかしようやく充実期を迎えた拓真からすれば、むしろ兄と一緒に踏む大舞台は歓迎でしかない。 苦しんだ分だけ、歯がゆかった分だけ強くなった。アンカハスを倒してこみ上げてきたものは嬉し涙でもあり、安堵の涙でもあるとともに、鬱積していた自己の解放を実現できた喜びではなかったか。 彼は噛みしめるようにして言葉をつむいだ。 「ボクシングが本当に好きなんだなって感じています。もし自分にボクシングがなかったら、人生がつまらなかったんじゃないかって思えるんです。これから唯一無二のボクサーになりたいっていうのもありますし、自分の色というものを出していければいい。そう思っています」 自分を知り、自分を認め、自分を押し上げていく。比較なんていらない。井上拓真は堂々と“我が道”を往く――。
---------------------------------- 井上拓真(いのうえ・たくま) 1995年12月26日生まれ。神奈川県座間市出身。2013年プロデビュー。18年12月、WBC世界バンタム級暫定王座獲得。19年11月、プロ初黒星を喫し、暫定王座陥落。23年4月、WBA世界バンタム級王座決定戦でリボリオ・ソリスに判定勝ち。24年2月、ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)を破り初防衛に成功。5月6日には東京ドームで石田匠と2度目の防衛戦を行う。