黒川伊保子 子に人生コストをかけない人が社会を活性化しているのを見逃してませんか?「結婚」「子ども」を聞く習慣は私たちの世代で<なし>に
厚生労働省が公表した「令和5年 人口動態統計月報年計(概数)」によると、2023年の出生数は72万7277人で、前年の77万759人より4万3482人も減少しました。このような状況のなか、「孫をどうこうする前に、20世紀型の子育てをしてきた私たちが意識を変えなくては始まらない」と語るのは、脳科学・AI研究者の黒川伊保子さん。今回は、黒川さんの著書『孫のトリセツ』から一部引用・再編集してお届けします。 【書影】AI時代を生き抜く孫たちのために祖父母がすべきこととは?黒川伊保子『孫のトリセツ』 * * * * * * * ◆動物界最大コスト、最大リスクの子育て 生殖本能が強く働く者たちは遺伝子セットの量産に励み、生殖本能に駆られない個体が子育てをフォローする。 竹内久美子先生は、これこそが、人類の生殖の仕組みであり、私たちが生殖期間を終えてなお生き続ける理由だとおっしゃった。 考えてみれば、人類の子育ては、動物界最大のコストとリスクを抱えている。 生まれて1年も自立自走できない動物なんて人類だけだ。 成熟して生殖が可能になり、縄張りを守り、餌を安定して獲得できるようになるまで、そこからまだ十数年はかかる。 そんな子育てを親たちだけでこなすには、人生コスト(時間、手間、意識、金)がかかりすぎるし、リスクが高すぎる。 人類の子育ては、大昔から、コミュニティの中で行われてきた。 いわゆる核家族のように、子育ての日々の手間のすべてが、親の手にゆだねられるようになったのは、近年のことである。
◆産む、産まないの自由 竹内先生の話には、余談がある。姉妹の中に子を持たない人がいると、その家系は、より繁栄するという説があるのだそうだ。 甥や姪をきめ細やかにフォローしてくれる存在になるから、子育ての質が上がり、子どもたちの人生の質が上がるのである。 人類の子育ては、生殖本能に翻弄されない人の手助けがあって、よりよく機能している。 女性の社会進出が進んだ現代、血縁に限らず、子育てに人生コストを奪われていない人たちの存在は、生態系の存続に大きく寄与していると言っていいのではないだろうか。 実際、私も、子どもを持たない女性たちに支えられてきた。 彼女たちの母性は、社会を照らすように惜しみなく使われているから。 会社のプロジェクトや後輩の育成に、きめ細やかに、意識と手間と時間を使ってくれるから。 子どもに人生コストをかけない人たちが、自分の仕事や趣味にそれを惜しみなく使ってくれることが社会全体を活性化することも見逃せない。
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