一等星「ベガ」のデブリ円盤は驚くほど滑らか。ウェッブとハッブルが観測
こちらは織姫星として有名な「こと座(琴座)」の一等星「ベガ(Vega)」の周辺。右は「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope: JWST)」、左は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」が取得したデータを使って作成されました。アメリカ航空宇宙局(NASA)は、ベガを取り巻くデブリ円盤(※)がここまで詳細に観測されたことはなく、その様子は驚くほど“なめらか”だと紹介しています。 フォーマルハウトを囲むデブリ円盤の全体像 ウェッブ宇宙望遠鏡の観測で明らかに ※…岩石と氷の破片や塵(ダスト)でできた星の周囲の円盤。 NASAによると、ウェッブ宇宙望遠鏡の「中間赤外線観測装置(MIRI)」は砂粒ほどの大きさがある温かな塵から放射された赤外線を、ハッブル宇宙望遠鏡の「宇宙望遠鏡撮像分光器(STIS)」は円盤の周辺部に分布する煙の粒子ほどの細かな塵が反射した光をそれぞれ捉えています。ちなみに画像の中央にはどことなく目を連想させる黒い丸がありますが、ウェッブ宇宙望遠鏡のほうはサチュレーション(輝度の飽和)によるもの、ハッブル宇宙望遠鏡のほうは星の光を遮るコロナグラフによって生じたものです。
詳細に観測されたベガのデブリ円盤はとてもなめらか
注目はウェッブ宇宙望遠鏡の画像です。ベガから約60天文単位離れた場所、太陽から海王星までの距離(約30天文単位)の2倍ほどのところにうっすらと隙間(ギャップ)があるように見えますが、それ以外の部分は非常になめらか。MIRIによるベガの観測データを分析した研究チームに参加したアリゾナ大学のAndras Gáspárさんは「他の星周円盤(星を取り囲む円盤構造)とは異なり、謎に満ちたシステムです」「ベガの円盤は非常に滑らかで驚くほど整っています」とコメントしています。 ベガはこれまでにもNASAの「スピッツァー(Spitzer)」や欧州宇宙機関(ESA)の「ハーシェル(Herschel)」といった赤外線宇宙望遠鏡、チリの電波望遠鏡群「アルマ望遠鏡(ALMA)」でも観測されていますが、NASAによればベガのデブリ円盤がここまで詳細に観測されたことは前例がないといいます。