一等星「ベガ」のデブリ円盤は驚くほど滑らか。ウェッブとハッブルが観測
ベガの周辺には木星や土星のような巨大惑星は存在しないかも?
ウェッブ宇宙望遠鏡のMIRIは誕生から4億5000万年ほど経ったとされるベガに年齢や温度が近い「みなみのうお座(南魚座)」の一等星「フォーマルハウト(Fomalhaut)」も観測しており、Gáspárさんを筆頭とする研究チームが2023年に研究成果を発表しました。フォーマルハウトは2つの隙間が生じた複雑なデブリ円盤を持っており、ベガのデブリ円盤とは対照的です。 フォーマルハウトの場合、惑星の重力によって塵がリング状にまとめ上げられたことで、デブリ円盤に隙間が生じているのではないかと考えられています(ただし、その役割を果たしていると予想される惑星はまだ見つかっていません)。一方、MIRIによるベガの観測データを分析した研究チームは、デブリ円盤に顕著な隙間が見られないベガの場合は、星から10天文単位以上離れたところに土星程度の質量を持つ惑星は存在しないことが示されていると述べています。つまり、なめらかなデブリ円盤を持つベガの周辺には、木星や土星のように巨大な惑星は存在しない可能性があるというわけです。 研究チームの筆頭著者であるアリゾナ大学のKate Suさんは「私たちは星周円盤にどれほどの多様性があるのか、その背後にある惑星系とどれほど関連性があるのかを詳しく調べており、隠れた惑星が見えなくても惑星系について多くの情報が得られています」「惑星形成のプロセスには未知の要素がまだ多くあり、新しいベガの観測は惑星形成モデルを制約する上で助けになると考えています」とコメントしています。 ハッブル宇宙望遠鏡とウェッブ宇宙望遠鏡によるベガの観測データを分析したアリゾナ大学の2つの研究チームの論文はThe Astrophysical Journalに掲載される予定で、arXivでプレプリントが公開されています。古くから親しまれた星であり、ある程度の街明かりがあっても見えるベガ。そんな星にもまだまだ知らないことがあったのだと思うと、夜空を見上げるのがちょっと楽しくなってきませんか? Source NASA - NASA's Hubble, Webb Probe Surprisingly Smooth Disk Around Vega Wolff et al. - Deep Search for a scattered light dust halo around Vega with the Hubble Space Telescope (arXiv) Su et al. - Imaging of the Vega Debris System using JWST/MIRI (arXiv)
sorae編集部