なぜ阪神は“守護神”スアレスを引き留めることができなかったのか
前出のスカウトも、「日本へスカウトに行くのは、もはや日本人選手のチェックだけが目的ではない」とスカウティングの変化を口にした。 スアレスに話を戻すと、「直近なら、同じ阪神で投げていた(ラファエル・)ドリスとジョンソンの例は、目安になりうる」と同スカウトは指摘する。確かに、スアレスが大リーグに移籍すると仮定すると、それぞれの日本での最終年の成績は似通っている。 スアレス が、62 1/3(投球回数)、 0.0( HR/9)、 1.2( BB/9 )、 8.4 ( K/9) 0.77 ( WHIP ) 、 1.16(防御率)。ドリス が 55 1/3(投球回数、 0.2( HR/9 )、 1.9(BB/9)、 8.2 ( K/9 )、 0.872( WHIP )、1.38(防御率)。ジョンソンが58 2/3(投球回数)、 0.3(HR/9)、2.0(BB/9 )、 14.0( K/9 )、 0.801(WHIP) 、 2.51(防御率)。 では、ジョンソンとドリスのメジャー移籍後の成績がどうだったかといえば、ジョンソンは昨年、24試合に登板し、防御率2.70、奪三振率12.2。今年は63試合に登板し、防御率3.22、奪三振率11.8。相変わらず奪三振率は高く、長所は変わっていない。 一方のドリスはブルージェイズと契約後、昨年は24試合に登板し、防御率1.50、5セーブ。今季は39試合に登板し、防御率5.63で、8月半ばに40人枠から外れ、マイナーへ降格。2人の明暗が分かれた。 ただ、前出のスカウトは、「スアレスの評価は、彼らよりも上」という。 「ジョンソンより奪三振率は低いが、スアレスの方が制球は安定している。ドリスは、数字こそ悪くないが、阪神での最後の年は、やや不安定だった」 ドリスのブルージェイズでの年俸は昨年が100万ドル(約1億1500万円)、今年が150万ドル(約1億7000万円)。相応ということか。ジョンソンは去年と今年が年俸200万ドル(約2億3000万円)。来年は、パドレスが300万ドル(約3億4500円)で契約選択権を行使した。 おそらくスアレスの評価は、グレイブマンらほどではないが、ジョンソンよりは上。年俸400~500万ドル(約4億6000万円~約5億6500万円)が相場と考えられていたが、現地時間11月30日に米メディア「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール記者は、ツイッターでパドレスが交渉に乗り出していることを伝え、「単年契約で700万ドル(約7億9000万円)程度が予想される」とレポートした。 掘り出し物どころか、メジャーの複数球団が、予想された相場以上に十分に投資の価値がある戦力だと判断したのかもしれない。 阪神の再オファーの条件が、どれくらいだったかはわからないが、この数字以上の金額を提示できなかったということになる。 チームの編成上なくてはならない戦力ではあるが、予算上700万ドル(約7億9000万円)以上の年俸を払うのであれば、新外国人の獲得に賭けるべきだという経営判断が下されたのだろう。メジャーのクローザーに対する適正価格をオファーされたのだから、太刀打ちできなかったのも仕方がなかったのかもしれない。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)