将来の夢を「スポーツ選手」と書くのが嫌だった──ラグビー元日本代表・山田章仁38歳が現役を続ける理由
4年に一度のラグビーワールドカップが、9月8日に開幕する。世界中の視線が集まる大舞台を経験したラグビー元日本代表の山田章仁に、世紀のアップセットといわれる2015年大会の南アフリカ戦から、自身が代表入りを果たせなかった19年大会、さらにはワールドカップそのものの魅力を聞いた。また、38歳になったいまも現役を続ける理由や自身の人生観にも触れてもらう。ストレートで熱い彼の言葉は、ラグビーになじみのない人にも届くはずだ。(取材・文:戸塚啓/撮影:倉増崇史/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「キミはジャパンに選ばれたいのか、それともジャパンで活躍したいのか?」
世界のラグビーに新たな歴史が刻印されたあの日、あの時、あの場所に、山田章仁は当事者のひとりとして立っている。 2015年9月19日に行われた、第8回ワールドカップの日本対南アフリカ戦である。ジャパンが試合終了間際のトライで34対32の勝利をつかんだゲームは、試合会場の都市名を取って「ブライトンの奇跡」と呼ばれる。 「南アフリカに勝った瞬間は、信じられなかったですね。試合後の現地の反応を見ていると、ジャパンの価値がすごく上がったのは理解できました。大会が終わって帰国すると、より勝利を実感しました。ものすごく盛り上がっていたし、いまでもこうやって話を聞いてもらえるので」
山田自身はサモアとの予選プール第3戦で、ワールドカップでの初トライを記録した。26対5の勝利につながった「忍者トライ」は、個人的にも大きな意味を持っていた。 「ジャパンはそれまでワールドカップで1勝しかできていなかったので、チームとしていい成績を残す目標がありました。同時に、個人的にも今後の人生につながる糧としたかったんです。勝負に出て結果を残したことで、自信になりました」 ワールドカップに臨むにあたって、胸に刻んでいた言葉がある。ラガーマンとしての人生訓と言っていいものだ。 「15年のワールドカップでジャパンのヘッドコーチを務めたエディー・ジョーンズさんが、慶應大学在学時に臨時コーチで来てくださったんです。そこで『キミはジャパンに選ばれたいのか、それともジャパンで活躍したいのか? どちらを選ぶのかで、その後のキャリアが大きく変わるぞ』と言われたんです。そのときから、ジャパンに選ばれるだけでなく、試合に出て活躍したいというマインドを8年とか10年のスパンで抱いて、それがサモア戦のトライにつながったのかな、という思いがありますね」