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東京都、今冬の緊急事態宣言の時短協力金支給まだ半分 大型連休の自粛で万単位の失業者増の試算

楊井人文弁護士
東京都の小池百合子知事(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 第二次緊急事態宣言中、営業時間短縮の要請に応じた東京都内の飲食店業者に対する協力金(1〜2月分)の支給が、4月23日時点で半分程度にとどまっていることが、東京都産業労働局への取材でわかった。

 4月25日からの第三次緊急事態宣言で、都は幅広い業種に休業や時短営業を要請する方針で、協力した業者には最大1日20万円を支給するとしている。

 だが、第二次緊急事態宣言より支給範囲が大幅に広がるため、支給業務が滞り、さらに遅れる可能性がある。そのため、資金繰りの厳しい中小零細企業の経営の行き詰まりが懸念される。

(関連記事=東京都の病床使用率30%台 緊急事態宣言の発令要件を満たさず違法の可能性も

 東京都は現在、1月8日〜3月7日に時短要請に協力した飲食店業者への協力金(1日あたり6万円)の支給手続きを行っている。3月8日〜3月31日分はまだ申請受付も始まっていない。

 都産業労働局に4月23日現在の支給実績を確認したところ、以下の通り回答があった。

●1月分(1月8日〜2月7日)

 申請 7万5000社、10万5000店舗

→ 支給済 5万5000社、7万店舗、約1200億円(店舗ベースの支給率67%)

●2月分(2月8日〜3月7日)

 申請 6万4000社、8万9000店舗

→ 支給済 2万社、2万2000店舗、約360億円(同・支給率25%)

●1〜2月分計

 申請 13万9000社、19万4000店舗

→ 支給済 7万5000社、9万2000店舗 約1560億円(同・支給率47%)

 各メディアの報道によると、東京都に限らず、各自治体で協力金の支払いが遅れている(日本経済新聞など)。

外食の業界団体「壊滅的打撃」 都知事らに要望書送付も返答なし 

 飲食店が加盟する一般社団法人日本フードサービス協会は21日、西村康稔・コロナ担当相と小池百合子知事に対し、飲食店業者への休業要請は極力避けてほしいとする要望書を送った。

 同協会の担当者によると、こうした要望書を出したのは同協会として初めて。

 要望書は「仮に、休業要請を行うに至った場合、外食企業各社は壊滅的な打撃を受けることは必至であり、現在の政府、行政による支援だけでは不十分であり、外食店舗の閉鎖、倒産などの経営危機に直面いたします」と訴え、休業要請を行った場合の協力金の「増額と迅速な支給」を強く要請する内容となっている。

 だが、政府や都側から特に返答はないという。

要請に応じない外食業者も

 特措法上、緊急事態宣言が発出された場合でも、知事による時短・休業要請に事業者が応じるかどうかは任意で、要請に応じる法的義務まではない。

 ただ、要請に応じなかった業者に対し、知事は、強制する必要性が特別に認められる場合に限り、一定の手続きを経て「命令」し、命令に違反した事業者を過料30万円に科すことができる。

 同協会の担当者は「基本的に加盟社が判断することだが、知事から要請を受ければ、社会的にみて、コンプライアンスの観点から、要請に応じざるを得ない。(酒類提供を主とする)居酒屋は休業になるのではないか」と話している。

 ただ、同協会に加盟しているのは全国の飲食店の約1割で、加盟していないグローバルダイニング社は、休業要請には応じない方針を明らかにしている。同社は、第二次緊急事態宣言の解除直前に都から時短命令を受け損害賠償訴訟を起こした

第三次緊急事態宣言で万単位の失業者増大は必至

 第三次緊急事態宣言での経済損失は、予定どおり17日後に解除された場合でも、1都2府1県あわせて約7000億円、失業者は2万7000人以上になるとの試算結果を、野村総合研究所エグゼクティブエコノミストの木内登英氏が23日、発表した

 今冬と同様、宣言が延長されて2ヶ月間になった場合は、失業者は15万人超になるとの試算も出された。

 木内氏は、緊急事態宣言は感染抑制のために必要との立場を示していることから、経済損失や失業者の試算で過大な見積もりをしているわけではなさそうだ。

 これまで、緊急事態宣言が感染抑制の効果があったのかどうかについて、きちんとした検証がなされた試しはない。

 昨年春の第一次緊急事態宣言は、広範な業種で自粛が行われたが、民間シンクタンクの検証で、宣言前から感染減少に転じていたため「宣言により感染減少のスピードを多少加速させた可能性はあるものの、少なくとも緊急事態宣言に大きな減少効果があったとは確認できない」(アジア・パシフィック・イニシアティブの新型コロナ対応・民間臨時調査会)と指摘されたことがある。

 緊急事態宣言の効果は不確定的要素が大きく、17日間という短期間で政府・自治体や専門家らが期待するような効果が出るかは不透明だ。

 一方で、これまでコロナ禍による解雇は少なくとも約10万人に上っていると厚労省は発表している。新たな緊急事態宣言で、経済損失や失業者の増大といった大きな副作用は避けられないだろう。

弁護士

慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHoo運営(2019年解散)。2017年からファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年『ファクトチェックとは何か』出版(共著、尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー受賞)。2022年、衆議院憲法審査会に参考人として出席。2023年、Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット賞受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。

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