韓国「汚物ビラ」を拾ってしまった男性が悲惨な目に
北朝鮮は29日までに、韓国の脱北者団体が宣伝ビラ風船を北に向け散布していることへの報復として、大量の「汚物風船」のを韓国へ向け飛ばした。これは、幼稚に見えてなかなか巧みな戦法だ。
韓国からの風船をいくら打ち落としても、すべてを補足するのは難しいし、脱北者団体の行動も止まらない。とはいえ、いきなり軍事行動に出れば「過剰反応」を指摘され、北の痛い所を突いた脱北者団体の「戦果」を自ら認めてしまうことにもなりかねない。
だが、汚物風船ならどうだろうか。あんなものが引き続き大量に飛んでくるとなれば、韓国の飛来地域の住民たちには「いい加減にしてくれ」という感情が芽生えるだろう。脱北者団体の行動に賛成か反対かにかかわらず、「気持ち悪いからもう勘弁してくれ」となる。これが世論として現れれば、行政もなんらかの対応をしなければならない。
しかしやはり、北朝鮮が恥も外聞もなくこうした行動に出たのは、脱北者団体の対北ビラにそれだけ効果があったことの反証ではある。
たとえば2020年には、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)のある元大隊長の男性が、脱北者ビラにからみ処刑される出来事があった。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
彼は古巣の舞台を訪れた際、こんな話をしたという。
「除隊したからもう言っても構わないだろうが、以前、軍事境界線で勤務しているときに飛んできたビラを見たら、将軍様(故金正日総書記)の故郷は白頭山ではなく、ロシアだと書かれていた。本名も金正日ではなくキム・ユーラだと書かれていた。われわれは歴史をきちんと学んでいなかったようだ」
さらには、金正恩総書記が異母兄の金正男(キム・ジョンナム)氏を暗殺したことなど、ビラに書かれていたことを同僚に話してしまった。
これらの内容は、金王朝が国民にひた隠しにしている「暗黒史」だ。話を聞かされた同僚が密告したのか、このことは保衛指導員(秘密警察)を通じて保衛局(前保衛司令部)に報告された。保衛局は、予審(起訴前の取り調べ)なしに即刻銃殺せよとの命令を下したという。
こんなことが書かれているビラは、回収するのもたいへんだ。作業に当たる兵士らはそれを見ないわけにはいかない。そうなると、彼らに対する再教育と監視も負担になる。北朝鮮は韓国から飛んでくるビラを「汚物」と呼んでいるが、金正恩氏にとってはまさに、本物の「汚物」よりタチが悪いのである。