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男余りなのに、婚活現場に「男がいない」のはなぜ?【後編・都道府県編】

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

前編はこちら↓

男余りなのに、婚活現場に「男がいない」のはなぜ?【前編】

都道府県別に見てみる

前編では、全国の数字としてご紹介したが、単純な未婚人口ではなく、結婚前向き度を加味した上で、未婚男女の差を見ると違った景色が見えることがわかった。

これらの計算式を、都道府県別に集計するとさらに興味深い結果になる。便宜上、全国平均の結婚前向き度を各都道府県別の未婚人口と掛け合わせることとした。都道府県別の結婚前向き度調査が存在しないからである。もちろん、この結婚前向き度は地域によってバラつきがあるだろう。全国平均の結果をすべてに掛け合わせることが正しいとは言えないが、一応の目安にはなると思われる。

男女それぞれの結婚前向き率を加味した男余り率人口ランキングは以下の通りである。男余り率は当該年齢の未婚男性人口を分母としている。

25~29歳では、男余り県はたったの7県となり、女余り県が40県と、むしろ全体的に男余りがマイナス、つまり女余り状態になる。逆に、30~34歳になると、今度は、女余り県が減ってたったの3県となってしまう。

※ここでいう「女余り」とは、単純な人口差ではなく、あくまで結婚に前向きな未婚男女人口の差分がマイナス(未婚男性より未婚女性が多い)という意味である。

2019年の人口動態調査によれば、女性の平均初婚年齢は29.6歳であり、初婚女性の年齢中央値は28.6歳である。もっとも女性の初婚ボリュームの多い年代において、これだけ全国的に女余りとなっているのだから、「婚活していると男が少ない」という印象になるのも当然なのだろう。特に、東京、大阪、福岡など大都市が顕著だ。大都市は人口も多い代わり、婚活相手探しもレッドオーシャンなのだ。

30代前半での婚活の方が有利?

30代前半は全体的に男余りだからといって、「30代前半で婚活した方が有利では?」と早合点してはいけない。実際の結婚のマッチングでは、同い年婚ばかりとは限らない。女余りの20代後半の婚活女子が、30代前半の男余りの男性に狙いを定めてくることが予想され、むしろ熾烈なマッチング争いとなりえる。

結婚相手に求める条件においては、女性は「男性の経済力」を重視するが、男性は「女性の年齢」を重視する傾向もある。マーケティング的にいえば、自らの「強み」のある20代で勝負した方が得策だといえよう。

不動の男余り神セブン県

とはいえ、結婚したい男性諸君も安心はできない。

ランキングを見てお気づきかと思うが、25~29歳でも30~34歳でも、男余りの上位7県(栃木・茨城・群馬の北関東と福島、愛知に加えて、静岡、富山)は不動の「男余り神セブン」である。特に、北関東の栃木・茨城は経年的に見ても男余りが常態化している。

これは、地域によって就業構造の違いがあるからであり、決して男性の結婚意欲が低いという話ではない。

最近では、自治体における婚姻促進施策もいろいろと実施されているが、県単体や自治体単体での取り組みではなく、ここにあるような男余りの県と女余りの県とで連携しあったヨコの取り組みがあってもいいと考える。

「余り」という言葉はネガティブに聞こえるかもしれないが、視点を変えれば、それは「豊かである」ということを意味する。

もちろん、これはあくまでマクロ的な統計であり、全員にあてはまるものではないが、傾向として押さえておいて損はないと思う。

結婚したい男女は、やみくもに今いる場所だけで婚活するのではなく、これらをふまえて、孫子の兵法ばりに「情報を駆使し、強みを活かして、戦わずして勝つ戦い」を考えてみてはいかがだろう。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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