ゼレンスキー大統領はこの機にEU加盟への勢いをつけたいという意味で前のめりになっているが、EU加盟には「アキコミュノテール」という(数万ページに及ぶ!)法体系(法規範)を自国法に組み入れる必要があり、さらに経済財政改革も実施しなければならない。EUとしてはこの水準を引き下げれば、他の国の加盟をも認めなければならず、これまでの加盟国の努力も水の泡と帰してしまうから、認めるわけにはいかない。通常は加盟準備国として長い年月をかけて加盟を実現するものだ。 しかも現時点で仮にEU加盟が実現したからといって、市場統合のためのプロジェクトであるからロシアと欧州が前面戦争を行うわけにもいかない。EUとしては何とかしてウクライナの苦境を救うために手を伸ばしたいという気持ちはわかるが、政治的には無責任な態度として終わってしまった。
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コメンテータープロフィール
専門は比較政治、欧州政治。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。日本貿易振興機構(JETRO)パリ・センター、パリ政治学院招聘教授、ニューヨーク大学客員研究員、北海道大学法学研究科教授等を得て現職。フランス国立社会科学高等研究院リサーチ・アソシエイト、シノドス国際社会動向研究所理事。著書に『アフター・リベラル』(講談社現代新書)、『ポピュリズムを考える』(ちくま新書)、『感情の政治学』(講談社メチエ)『ミッテラン社会党の転換』(法政大学出版局)、編著に『ヨーロッパ統合とフランス』(法律文化社)、『現代政治のリーダーシップ』(岩波書店) など。
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