解説クリスマスまでに内閣を発足させると約束していたバイルー首相、ぎりぎり間に合った結果となった。大統領派が多数派を形成できない中、マクロン大統領は左派陣営(屈しないフランス、社会党、緑の党などからなる新人民戦線)のうち、現実主義路線へと傾斜する社会党を切り離して、分断することで安定内閣を作りたいという意向もあっただろう。そもそも解散総選挙も、社会党が離反することを予期して決断したともされる。 もっとも元首相のボルヌ氏はマクロン派、バルス氏も社会党内からは嫌われている人物で、新人民戦線の結束は高いままだ。依然として極左と極右が一致すれば倒閣が可能になる状況は変わっていない。2025年度の予算案を通すことができるかがまず最初の関門だ。
コメンテータープロフィール
専門は比較政治、欧州政治。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。日本貿易振興機構(JETRO)パリ・センター、パリ政治学院招聘教授、ニューヨーク大学客員研究員、北海道大学法学研究科教授等を得て現職。フランス国立社会科学高等研究院リサーチ・アソシエイト、シノドス国際社会動向研究所理事。著書に『アフター・リベラル』(講談社現代新書)、『ポピュリズムを考える』(ちくま新書)、『感情の政治学』(講談社メチエ)『ミッテラン社会党の転換』(法政大学出版局)、編著に『ヨーロッパ統合とフランス』(法律文化社)、『現代政治のリーダーシップ』(岩波書店) など。