提言政治家に限らず、他人の発言を捏造する動画を作成、頒布する行為は、許されないことだと考えます。今回は本物のロゴを勝手に使って外形的に「ニュースの偽装」をした点も悪質性があります。発言を捏造された人への名誉毀損と同時に、ロゴを冒用された報道機関への著作権・商標権侵害、信用毀損にあたる可能性があります。 処罰感情がヒートアップし、これを契機に偽情報の規制強化の議論が高まる可能性もありますが、一方で、表現行為に関わるセンシティブな問題ですから、冷静な議論も必要です。名誉・信用毀損、著作権侵害など、既存の法規制での対応を考えるべきかと思います。 最近はこうした事例も「偽情報」問題として語られることが多くなりましたが、解釈次第で広がりやすい曖昧な概念です。画像・動画が本物である(真正性)という人々の信頼を損なう「偽造」「捏造」行為の悪質性に着目して「情報偽造」問題と捉える方が明快になると考えます。
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コメンテータープロフィール
慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHoo運営(2019年解散)。2017年からファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年『ファクトチェックとは何か』出版(共著、尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー受賞)。2022年、衆議院憲法審査会に参考人として出席。2023年、Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット賞受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。