解説記事に「4月15日時点で、接種と死亡との因果関係が否定できないと認められたのは2人のみ」とありますが、これは副反応疑い報告制度によるもので、個別的な因果関係の審査がきちんと行われている制度ではないようです。実際に個別的な因果関係の審査を担っているのは、健康被害救済制度の方です。接種後死亡事案の審査申請は1372件、うち596件が認定され、206件が否認、いまなお500件以上が審査中となっています。死亡事案以外を含めると、7384件の健康被害が認定されています(5月31日現在)。 そもそも医学的に厳密な因果関係の証明は不可能とされています。したがって、副反応疑い報告制度であれ、健康被害救済制度であれ、どちらも認定する際には「因果関係は否定できない」という表現が使われています。副反応疑い報告制度の2件だけ伝え、健康被害救済制度の審査・認定状況を無視する報道姿勢は考えものです。
コメンテータープロフィール
慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHoo運営(2019年解散)。2017年からファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年『ファクトチェックとは何か』出版(共著、尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー受賞)。2022年、衆議院憲法審査会に参考人として出席。2023年、Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット賞受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。
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