国葬儀をめぐっては反対論が日増しに強まっています。この間の議論から抜け落ちているのは犯罪被害者保護の視点です。 犯罪被害者等基本法などでは、犯罪被害者遺族には「個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利利益」があり、国は遺族が平穏に過ごせるように支援する法律上の責務が定められています。最高実力者であった政治家、公人中の公人とはいえ、この法の理念を全く無視してよいものではありません。 公衆の面前で演説中に射殺されたこと自体でも衝撃的であるのに、こうして世論を二分している状況をみると、ご遺族の感情はいかばかりかと察せられます。せめて国会で与野党党首会談、法的根拠や実施内容に関する国会審議、追悼演説などを経て決められなかったのか。拙速な決定により、犯罪被害者保護法制の理念にもとるような現在の事態を招いてしまった岸田首相の責任は小さくないと思われます。
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コメンテータープロフィール
慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHoo運営(2019年解散)。2017年からファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年『ファクトチェックとは何か』出版(共著、尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー受賞)。2022年、衆議院憲法審査会に参考人として出席。2023年、Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット賞受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。