解説ニュースには常に「速報性」と「日常性」が要求されるが、加えて「視聴率」を得られるネタか、描き方かという観点もある。クマ関連のニュースも被害が出た、恐い、危険という情報が重視されがちで派手な演出も行われる。さらに駆除担当者への報酬額の多寡といった情報も「面白い」ネタとして扱われる。それに記者は必ずしもその分野の専門家ではなく、付け刃的な知識や、一方の取材先の言い分だけで報道してしまう恐れもあり得るだろう。それらのバランスをいかに取るかは、報道の現場では常に悩まされる。本記事の記者は、その中で試行錯誤をしている様子が伝わった。一過性の放送よりも情報が蓄積されていつでも読めるwebマガジンを重視するのも一つの手だろう。ただネット情報は、自分でそのサイトにたどり着いてもらわねば読んでくれない。試行錯誤はまだまだ続く。
コメンテータープロフィール
日本唯一にして日本一の森林ジャーナリスト。自然の象徴の「森林」から人間社会を眺めたら新たな視点を得られるのではないか、という思いで活動中。森林、林業、そして山村をメインフィールドにしつつ、農業・水産業など一次産業、自然科学(主に生物系)研究の現場を扱う。自然と人間の交わるところに真の社会が見えてくる。著書に『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)『絶望の林業』『虚構の森』(新泉社)『獣害列島』(イースト新書)など。Yahoo!ブックストアに『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』。最新刊は明治の社会を揺り動かした林業界の巨人土倉庄三郎を描いた『山林王』(新泉社)。