見解かつて薬物の使用は、キリスト教の「七つの大罪」のうちの過食や耽溺を戒める過剰の罪を犯す行為だとされてきた。薬物依存になる者は、快楽に抵抗できない道徳的に弱い人間であり、薬物を断つ意志の力が不十分ならば道義的な非難とともに強制的な断薬が必要だと考えられた。 19世紀末に薬物がまん延し、大きな社会的脅威とみなされ、依存症は心理的問題だとも考えられるようになったが、この時期に確立した今に続く法制度は、依然として依存症に対して懲罰的断薬で臨んだ。 しかし20世紀後半になって、さまざまなストレスが薬物の反復使用につながり、それが脳に負担をかけることが分かってきた。心臓への負担が心臓病のリスクを高めるように、脳へ負担をかけると「脳の病気」になる。世の中に薬物を使っても依存症にならない人がいるのは、道徳的に優れているからでも、意志力が高いからでもないのである。 田代さんを陰ながら応援しています。
コメンテータープロフィール
1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。
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