見解「麻薬単一条約」(1961年)は、大麻を、コカインやヘロインと並んで、依存性が強く、特に危険な薬物に分類していた。現在はWHOの勧告によって一段階格下げされたが、それにもかかわらずこの条約に加盟している日本は、条約が推奨する大麻に対する厳しい懲罰的対応を相変わらず忠実に実施している。そもそも当初の決定は60年以上前のもので、相対的な健康リスクについての十分な科学的検討にもとづいたものではなかった。当時は、薬物問題は多くの国において重要な関心事ではなく、少数の国が議論を主導し、国際的な規制の方向性をかれらの望む禁止の方向にリードしたのである(特に国内で反戦運動や人種問題を抱えていたアメリカの政治的な意向が強かった)。その後、大麻の懲罰的禁止に疑問をもった多くの国々が条約から離反しているのは周知のとおりである。そのような中で、大麻に対する「罰による抑制」が妥当なのかを見直すべきなのである。
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コメンテータープロフィール
1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。