補足大麻解禁派でも、大麻を吸った状態での運転は厳罰に処すべきだという意見が圧倒的である。したがって飲酒運転に関する法原則を大麻に応用することになるが、実はこれが簡単ではない(医療用大麻を合法化している州では特に問題)。 水溶性のアルコールの代謝は個人間でかなり一定しているが、脂溶性の大麻の代謝速度は個人間で大きく異なるし、何よりも飲酒検知装置のような簡単な大麻検知装置は存在しない。 大麻を合法化しているアメリカの州では、警察官が運転者の行動(話し方や歩き方、表情など)を観察して証拠としているが、主観的で不正確という問題がある。運転者の外見や行動から薬物の影響を判定する薬物反応専門家を警察官として採用している州もあるが、運転者が事故で意識不明などの状態にあれば観察検査は不可能である。 運転者の呼気や血液検査から運転能力の低下をより正確に特定できる化学マーカーの開発が喫緊の課題となっている。
コメンテータープロフィール
1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。