見解今でも精神的な過ち、とくに道徳的な過ちが刑罰の十分な根拠だとする意見は強い。しかし、何が有害か、何が処罰に相応しいかを判断するのに、より客観的な基準に目を向ける必要がある。 売春の害については、たとえば性感染症の蔓延、客への公然たる勧誘、違法所得の隠匿、あるいは性的関係の堕落、セックスワーカーへの搾取、暴力などがある。商業的性行為に内在するものが多いが、薬物問題と同様に、売春に関連する暴力の多くは、それが違法であることによってさらに悪化している。売春が違法であるため、トラブルが警察に通報されにくくなるし、セックスワーカーが餌食にされやすい。犯罪化は、セックスワーカーの暴力に対する脆弱性を増大させている。しかしこれらは少なくとも合法化や政府による規制によって改善できるものも多い。闇市場についてわれわれがすでに知っているものを、労働者の権利についての考え方に組込もうというのである。
コメンテータープロフィール
1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。
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