解説MDMAは、世界中で大麻に次いで使用される違法薬物の一つである。MDMAは体内でいわゆる幸せホルモンの分泌を促すことから、他者との共感の感情を大幅に高める作用がある。MDMAは1912年にドイツで減量薬物として合成されたが、1960年代に精神療法の補助薬物として使われ始めるまではほとんど無視されていた。MDMAが幻覚を起こすことはほとんどないというが、化学構造が覚醒剤やLSDと似ているために1977年にイギリスで違法とされた(日本では麻向法の取締対象であり、所持、使用などは7年以下の拘禁刑)。 欧米ではMDMAの医療効果(PTSDやうつ病などの治療)について実証研究が行なわれており、依存症、乱用、身体リスクという点では、MDMAよりオピオイド系薬物の方がはるかに深刻であることから、娯楽用大麻が合法化(非刑罰化)された場合、MDMAを引き続き犯罪化すべきだとの主張が難しくなる可能性がある。
コメンテータープロフィール
1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。
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