見解1万円賭けて2万円当てた場合の「快感」よりも、100万賭けて90万円当てた場合の「快感」の方がはるかに大きくて、忘れられない体験となる。ギャンブルにハマった者は、遊んでいる間、心のどこかに負けたいと思う気持ちがあり、負ければ負けるほど、勝ったときの興奮も強くなる。大谷選手の通訳が、オンライン賭博で何十億円もの借金を重ねたのも、ここに大きな理由がある。そこに刑罰の抑止力は期待できないが、ギャンブル依存にハマってしまった人を、不道徳や汚名、意志の弱さといった古い文化的語彙で論じることも真の問題を見えなくする。 ギャンブルに限らず依存症にはそれに影響する外的要因があることは確かで、オンラインカジノの問題性の根底には、オンライン・ギャンブルへの距離の近さとアクセスの手軽さがある。ここが薬物依存などとの大きな違いである。合法違法にかかわらず、ネットにおけるギャンブルの提供じたいに規制が必要である。
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コメンテータープロフィール
1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。