大麻の健康被害の程度については諸説あるが、少なくとも未成年に対する被害を軽く見る見解はない。大麻解禁のカナダでも、未成年への提供は最高14年の自由刑が科される重い犯罪だ。しかし、未成年の使用は犯罪ではない。彼らはあくまでも保護の対象だからである。 他方日本では、大麻の所持は5年、栽培は7年と重い犯罪であるが、未成年への提供は加重されていない。 また、未成年であっても14歳以上であれば犯罪となる。しかし、よく考えてほしい。なぜ彼らが「犯罪者」とされるべきなのかを。 大麻と比較して健康被害が決して軽いとはいえない酒やたばこの場合、未成年が飲酒喫煙しても、また未成年が未成年に飲酒喫煙させても罰せられることはない。未成年への大麻の広がりが社会問題であることは分かるが、彼らに「犯罪者」の烙印を押すべきではない。 成人による未成年への提供は重罰化し、未成年者じたいの大麻所持等は非犯罪化すべきである。
コメンテータープロフィール
1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。