提言女性から男性になる場合はまったく問題はないが、男性が女性に性別変更しようとする際には、まだ課題がある。私たちの社会は、性別によって女性の安全を担保したり(トイレや風呂)、公平性を担保したり(男女別のスポーツ)してきている。 これまで身体によって決まっていた性別を、ジェンダーアイデンティティや性自認という内面に移すなら、これらの問題の解決が必要である。 しかし現状では、この話をすることすら「トランス差別」「ノーディベート」であるとされ、まったく解決の見通しが立っていない。LGBT理解増進法の立案のときに、国会で女性スペースの利用は戸籍の性別や身体的な特徴でと話されていたが、戸籍の性別と身体的特徴が一致しない場合については言及されてもいなかった。 個人の思いは理解できるが、社会制度の合意ができていないのに、手術要件の撤廃は時期尚早であると考える。きちんとした議論をまず積み重ねるべきだ。
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コメンテータープロフィール
1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、 武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。
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