解説ここまで時間を要し、複雑な経過をたどったのは、初動捜査が不十分だった上、検察の処分方針に一貫性がなかったからにほかなりません。 (1)飲酒し(2)著しい速度超過で(3)被害者をはねたのに(4)直ちに救護しなかったとされる事件ですが、(1)が基準値未満で、当初は(2)(4)も判明していなかったため、起訴は(3)にとどまり、判決も禁錮3年、執行猶予5年で確定しました。 その後、遺族の調査で(2)(4)が明らかとなり、検察は(2)で起訴したものの、先に交通反則通告を経ている必要があるとして公訴棄却になりました。一方、検察は(4)を2度にわたって不起訴にしましたが、時効直前に一転して起訴しました。 一審が懲役6か月の実刑、控訴審が無罪であり、上告審でこの判断が覆される可能性が出てきたわけですが、最初から十分に捜査を尽くし、一括して起訴しておけば、ここまで遺族を苦しめることもなかったでしょう。
コメンテータープロフィール
1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。
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