解説「裁判員裁判が『裏目に出た』という声も出ている」とのことですが、評決は裁判官3人と裁判員6人による多数決であり、彼らがそれぞれどのような判断を下したのか不明です。ましてや、裁判員法で有罪認定には裁判官、裁判員のそれぞれ1人以上を含む過半数の賛成が必要だと決まっています。 それこそ、有罪認定をした裁判官が誰もいなければ、たとえ裁判員全員が有罪認定でも必ず無罪になります。プロの裁判官ですら有罪か無罪か迷うような事案であり、無罪判決と裁判員裁判を軽々に結びつけることはできないでしょう。 元妻が詐欺罪の刑期を終える来年11月までに控訴審判決が出るかも未知数です。検察側は高検、最高検の決裁を仰いだ上で相当分厚い控訴趣意書を提出しなければなりません。弁護側も詳細な答弁書を提出することでしょう。それだけでもかなりの時間が必要だし、高裁が検察側の補充立証を認めれば、さらに時間を要することになります。
コメンテータープロフィール
1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。