見解ホームレスの人たちが「今のままでいい」と回答する背景を考える必要がある。これまでの研究で明らかにされているように、自由に見える個人の「選択」にも、背景には社会的強制が観察できるからだ。 まず、「労働による自立」や自己責任論を強く内面化しているがゆえに、行政による支援を利用しない傾向がある。相談現場でも、中高年の方にその傾向は強く感じられる。高齢になり、働き口を探すことが困難な状況になっても、「野宿生活を自前で生きていく」と。また、行政の支援や収容される施設への忌避感もある。生活保護であれば無料低額宿泊所に収容されるが、環境が劣悪であることが多い。個室がない、部屋でダニや南京虫がわく、食事がまずい、通帳・カードやスマホを没収される、保護費が手元に残らない、などだ。路上生活者に聞くと「施設より路上の方がマシ」という人も少なくない。 このように、ホームレスの「選択」は決して積極的なものではない。
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コメンテータープロフィール
NPO法人「POSSE」代表。年間5000件以上の労働・生活相談に関わり、労働・福祉政策について研究・提言している。近著に『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』(青土社)。その他に『ストライキ2.0』(集英社新書)、『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『生活保護』(ちくま新書)など多数。流行語大賞トップ10(「ブラック企業」)、大佛次郎論壇賞、日本労働社会学会奨励賞などを受賞。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。専門社会調査士。
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