給与数千万円未払いか 静岡県・掛川拠点の人材派遣業「破産」
静岡県内でベトナムや南米出身の外国人などを雇用する人材派遣会社「エルピースタッフ」(東京都)の元社員の給与が、1月時点で1カ月分支払われていない疑いがあることが、6日までの取材で分かった。未払い給与の総額は少なくとも数千万円規模とみられる。ベトナム人を中心とする元社員らは、磐田労働基準監督署や駐日ベトナム大使館に対応を相談している。 関係者によると同社は2024年12月28日ごろ社員に対し、破産手続きに入るため30日で雇用契約を解除し、11月分の給与が未払いになると説明。倒産時に国が給与の最大8割を支払う「未払い賃金立て替え払い制度」の活用を促した。倒産理由は資金繰りの悪化や債務超過としている。 同社は掛川市や都内などに拠点を置き、ベトナム人やブラジル人、日本人など数百人の社員を県内各地の製造業や梱包(こんぽう)業などに派遣していた。今後は事業を愛知県の人材派遣会社に譲渡し、元社員にその会社への移籍を勧める考えという。エルピースタッフは「(社長など経営陣が不在で)取材に応じることはできない」としている。 同社のベトナム人は専門的な労働が可能な「技術・人文知識・国際業務」(技人国)などの在留資格で働いていた。現在までに給与未払いを訴えている83人分の情報をリスト化し、駐日ベトナム大使館に再就職や生活面での支援を求めている。磐田労働基準監督署にも相談している。 ■県内外国人「絶望した」 「信じられない思いで絶望した」「家族に仕送りできない。なぜもっと早く破産を教えてくれなかったのか」。年の瀬に突如持ち上がったエルピースタッフ経営危機の情報は、瞬く間に県内外国人社会に広がった。将来が不安な元社員は悲痛な声を上げている。 破産管財人選任後に行われる国による賃金立て替え払いの時期は未定だ。失業保険の受給申請に必要な離職票を受け取ることができていない人も多く、焦りが募っている。県西部に住むブラジル出身の40代女性は「会社が勧める移籍先に行く気はない。早く離職票とお金だけ出して」と求めた。ベトナム人の30代男性は「1月末に支払われる予定の12月分賃金も支払われないと聞いている。50万円以上のお金がないと生活は苦しい」とこぼした。 折しも1月下旬~2月上旬は、ベトナムで物入りな旧正月(テト)の時期。県東部の40代ベトナム人男性は「母国の家族に贈り物をしたいけれども、それどころではない」と嘆いた。
静岡新聞社